オデュッセイア
監督:クリストファー・ノーラン
感想
待望のC.ノーランの新作『オデュッセイア』。近所でやっているけれど、さすがにIMAXで見たくて隣街まで出かける。
同じマット・デイモン主演の『火星の人(The Martian)』の邦題をなぜだか『オデッセイ』にしてしまったバカのおかげで紛らわしいことになっているけれど、こちらは紛れもなくホメロスの『オデュッセイア』が原作。
『イリアス』の後日談とも言える作品。両方とも若い頃に読んだ記憶があるけれど、僕はむしろ『イリアス』の方が好きだった(アキレス、パトロクロス、ヘクトル、アイアス…英雄たちの物語)。
『イリアス』と言えばブラッド・ピットの『トロイ』のモチーフ(≠原作)となった作品。もともとはかなり神々と英雄という要素が強い物語だけれど、映画は神々の要素(ファンタジー要素)をすっぱりと切り捨てて人間の物語に仕立てていた。
ノーランの『オデュッセイア』も見る前はそのイメージがあったのだけれど、実際には思ったよりもずっとファンタジーな(原作よりの)作品だった。そういうのは割とチープになりがちだけれど、そこは流石にノーラン。重厚な映像に仕上げている。そういう意味ではピーター・ジャクソンの『LotR』に近いかも知れない。
さらにノーランらしく、実際の船とか建物を用いた映像は画としてのはっきりとした手応えがある。ひとつひとつの映像がちゃんと根付いている。風が感じられる。特に崖上にある宮殿のテラスの映像は風を感じた。
物語に関して思ったのは、「やっぱり古典って面白いんだな」ってこと。原作を読んだのが昔過ぎて忘れているところもあったのだけれど、映画を見ていく内に「ああ、そう言えばこういう物語だった」って思い出していく感じ。
だから、かなり没入して見ることが出来た。ただ一点、それを崩してしまったのが黒いヘレネの存在。事前情報をほどんど入れないで見たから、キャスティングについても何も知らないで見たのだけれど、なんか映画外部の事情を感じてしまって「あ~あ」って。
一瞬、「この世のものではないような絶世の美女って設定だから、他の登場人物たちとは明らかに違って良いか…」と思いかけたけれど、でもやっぱり画的な説得力がない。アフリカからやってきた女王に見えてしまう。
そもそも、なんでわざわざヘレネなんだ。別に現代が舞台になっている作品(『オデュッセイア』をモチーフにした『ユリシーズの瞳』って傑作もあった)や歴史的に解釈の幅があるならそういう(ポリコレに配慮した)配役でもいい。でも、これまで幾度となく名画に白い肌で描かれてきて、神話とはいえ系図もはっきりしている人物(白鳥に化けたゼウスが産ませた子という伝承すらある)。
だったらむしろ、カリュプソが黒かった方が納得感があった。というか、なんでそんな妥協をせにゃあかんのか。こういう歪みに対する反動が史上最低の大統領を生む土壌になっているんじゃないのか。まあ、良いや(東洋系の人物も散見されたけれど、そちらはモブだったからあまり気にならなかった)。
これは白人の場合でも変わらなくて、たとえば同じ伝説上の存在でも、白人が日本武尊を演じたら何でやねんとなる。逆にかぐや姫だったらそんなキャスティングもありかも知れない。それは、かぐやはそもそも何者かよく分からない(解釈の幅がある)から。
そんな感じで気になるところはありつつ、映画的には充分以上に満足な出来。流石。
☆☆☆☆★(4.5)
クリストファー・ノーラン監督超大作『オデュッセイア』本予告