黒牢城(3.0) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

黒牢城

監督:黒沢清

感想
 荒木村重って人は昔から良くわからん。

 信長に気に入られて摂津一国を任せられているんだから、有能な人だったんだとは思う。ただ、行動原理が良くわからん。戦国の世だから裏切りは普通だけれど、この人は裏切ったくせに自分だけ城を抜け出して一族郎党ほぼ皆殺しにされた印象が強い。自分だけ生き残って茶人とかになってる。実際はもう少し複雑だとしても、どういう人間なんだ。一体。

 この映画、そんな村重が主人公になっている。『氷華』の米澤穂信さんの原作だってことは知っていて、ミステリーだってことも知っていた。だから、そういう作りだってことは別に気にならなかったのだけれど…。

 冒頭、かの「黒田官兵衛」が有岡城を訪れる。これは史実通りなんだけれど、この時期はまだ「小寺」と名乗っていた筈。この作品のリアルのレベルが、どの程度に設定されているのかここで分かる。まあ別にそれでも良いよ。フィクションでも、荒木村重をどういう人間として調理するかに興味がある。

 物語は春夏秋冬の四部構成になっている。ひとつひとつの季節にエピソードがあって、それぞれの謎解きがある。わりと各部が独立していて、あまり映画的な構造ではないと思ったけれど、まあ別にそれも良いよ。

 ただ…冬春夏のトリックは鈍いし、ハっとするようなものではなかった。最後の秋に関してはそもそも成立していないと思う。これ原作自体がそうなのか、脚本がそうなのか。映画の見え方がそうなのか。

 それに、秋の最後は語りが面倒すぎるしどうでもいい。そもそも設定自体も嘘くさい。映画自体は本物を使った映像はそれなりだったし、俳優陣の演技も良かった。でも、この語りで-0.5。

 それから、最後のテロップ。これは史実だから書いてもいいと思うけれど、要は、村重が城を出たあと有岡城は陥落し、信長はその後しばらく経って本能寺で死ぬ。でも村重は生き残ったという話がテロップで語られる。

 これ、大事な情報が不足している。まず、死んだと思われた松寿丸(黒田長政)は竹中半兵衛に匿われて実は生きている。さらに大事なのは、村重の判断によって一族郎党は皆殺しされているってこと。自分だけ生き残る。

 分かっていて削っているのかも知れないし、そんな歴史上のことは別に語らなくても良いというスタンスなのかも知れない。だけど、モヤモヤが残る。映画の筋としても成立していない。この主人公は一体何がしたかったのか、どういう人物だったのか見えてこない。そもそも一番語るべきところを逃げている。-0.5。

 (原作はどうなっているかしらんけど)この映画はそもそも村重というキャラクターを描くのに失敗している。

☆☆☆(3.0)



映画『黒牢城』本予告【6月19日(金) 全国公開】