シティーハンター(3.0) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

シティーハンター(3.0)

監督:佐藤祐市

感想
 子供の頃一番好きな女性キャラクターは野上冴子だったし(はじめて見たアニメ版が冴子回で僕はずっと彼女がヒロインだと思ってた)、原作は何度読み返したか分からない。『エンジェルハート』は好きじゃないし、新作のアニメ映画もいまいちだった。

 評判のいいフランス版もあまり好きにはなれなかった。たしかに原作愛は感じるし、ものすごく「ぽい」ところはあるんだけど、半分くらいは欧米のおバカ映画の雰囲気が入っていて(そういう映画自体は僕は好きだけれど)、その辺が微妙にノレなかった。

 僕の中のシティーハンターはあの頃のまま止まったままだ。猥雑な新宿の明け方のゴミ臭さと不思議とどこか澄明な空。その街を駆け巡る香と獠、あのラストシーン。あれが僕にとってのシティーハンターだ。

 で、これ。

 冒頭からなんか違う感じがする。なんだろうね。香港映画みてえだなって思ったんだよね。あとからその違和感の正体が分かった。これ、絶対アクション監督入ってるなと思ったらやっぱりそうだった。

 なんかね。普通のアクションにしちまうのよ。『仮面ライダー』で庵野さんが感じた違和感に近いかな。実写ドラマのアクションシーンをそのままシティーハンターに持ってきて、それでシティーハンターっぽくなるかってそうはならないわけで。

 シティーハンターってそもそもアクション漫画ではないと僕は思うし、獠の真骨頂はあの一撃で仕留める射撃の腕にあるはずなのに、そこがアクションシーンにまぶされることで、色が薄くなっていた。あいつら何でもかんでも「アクション映画」にしちまうんだ。

 しかも槇村が殺されるっていうわりと序盤のシリアスなシーンをやったせいなのか、ずっとその重苦しい雰囲気を引きずっている。対談で北条さんは「納得いかずに描いていた時期の話」って言ってる↓

「今回の物語は、連載当初のハードボイルド色の強いときの話。実は自分のなかでは、けっこう納得がいかずに描いていた時期の話なんです。いま皆さんが冴羽リョウに持っている、明るく軽いキャラクターがあまり生かされていなくて」
https://www.cinematoday.jp/news/N0142701

 僕はずっと、この映画を見ながら、この制作者はなにがしたくてこの映画を撮ったんだろうって思っていた。インタビューなんかでは主演の鈴木さんの作品に対する想いが毎回語られていて、それは確かなんだろうけれど、監督とか脚本はこの作品でなにがしたかったんだろう。それが最後までわからなかった。獠が獠であることの美学みたいなものも感じれられない。

 この監督の『キサラギ』はわりと好きな作品だけれど、この作品は『キサラギ』風味で逆にダメだった。新宿を描いているけれど、別に新宿っぽさはそんなに感じなかったし、コスプレイヤーとかむしろ秋葉の文脈でしょとか。それは『キサラギ』には合うけれど、シティーハンターで何がしたいかは分からなかった。

 最後だけ、Get Wildが掛かるところはテンションが上がる。でも終わりよければすべてよしとはならない。新録になっているのだけれど、宇都宮さんの声が弱くなってて悲しくなったよ。

☆☆☆(3.0)



『シティーハンター』予告編 - Netflix