『流浪の月』
監督:李相日
感想
まず、映像作品としてのクオリティは高い。
撮影は美しいし、ロケーションも目を瞠る。アパートのロケーションなんて、よくこんな場所見つけたなと思うくらい。別に何の変哲もないアパートなのだけれど、駐車場の一角にポツンと立っていて、妙な浮遊感がある。
感心したのは広瀬すずの演技・・・もそうなのだけれど、それ以上に子役(白鳥玉季)がちゃんと彼女の子供時代に見えたこと。目の鋭さとか全体的な雰囲気がちゃんと(この作品における)広瀬すずの子供時代に見える。演技力も高いんだろうね。
これって結構凄いこと。普段、僕らはなんとなく約束事として「この子がこの人になるんだな」という感じで見ている。この作品はそういうところを妥協していない。だからこそ、子供時代に抱えていたものが今に続いているんだなってことにちゃんと(心から)納得できる。
神は細部に宿ると言うけれど、そういうところからもこの映画の映像作品としてのクオリティの高さは理解できる。
ただ…本としてはどうなのこれ。
別にやりたいことは分かるのよ。言いたいことも分かる。でも、この作品には他人が居ない。主人公2人以外はものすごく記号的な存在に見える。
感覚としては手塚治虫の『火の鳥 復活篇』に似ている。あれは半ば機械化された主人公(レオナ)が周りの人間すべてが機械に見えてしまって、逆にロボットのチヒロに人間味を感じるって話だった。
もちろん、手塚はわざとそれをやっているのだけれど、この作品では無自覚に周囲の人間を機械的に記号的に描いてしまっている(し、その手付きも雑)。言ってみれば、自分たちだけが繊細だと思っている人間の話。テーマとかそれ以前に「めんどくせえなあ」と思ってしまった。
2022年の作品。U-NEXTで視聴。
☆☆☆☆(4.0)
『流浪の月』本予告/5.13公開