THE FIRST SLAM DUNK(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

『THE FIRST SLAM DUNK』

監督:井上雄彦

感想
 原作は擦り切れるほど読んだ。アニメ版にはそこまで思い入れはない。このリブート版『スラムダンク』はかつてのアニメ版とは別物として作られている。その点に引っかかる人も多いだろうけれど、僕自身はそこまで違和感はない。

 やろうとしていることは明確だ。世の中には「アニメらしいアニメ」というのがある。規格化され記号化された作品たち。これはそういうものとは違うものを作ろうとしている。マンガを原作に持ちつつ、それを既存のアニメ的方法論に基づかず、いかに映像として立ち上げるかを考えている。

 それはかなりの部分成功していると思うし、とくに終盤は圧巻だ。原作準拠の無音の攻防に圧倒的な作画の力(ここは作画になってるんだよね)。有無を言わさず観客を引き込む力がある。

 一方で、ノイズとなっている部分がちょこちょこあって、前半は割りと集中できない。

①まず山王戦の会場と観客の描写。技術の発展もあって、3DCGによるキャラクターは(動きも含めて)そんなに気にならないのだけれど、会場と観客が常に映されているのは結構気になる。マンガだったら背景は省略できるし、アニメでも背景画にすればその辺の情報量はコントロールできる。ただ、3DCGは常にそこにあるものだし、それを撮影することで作られるから情報量のコントロールが難しい。実写みたいなメリハリのなさがあって、現実の普通の試合を見ているような印象が生じてしまう。それはリアルとも言えるのかもしれないけれど、のっぺらぼうの熱量が感じられない観客が常に映されているのはノイズになっている。

②花道の声。僕はアニメ版にそれほど思い入れがないから、新声優陣は別にたいして違和感なく聞くことができた。ただ、花道だけは最後まで違和感があった。馴染みのあるセリフが野太い声から発せられる違和感。最初の方なんて、「今のセリフ花道のセリフの筈だけれど、もしかして花道が喋った?」みたいな感じだった。今回の主人公はリョータだから、あまり主人公感がない声にしようとしたのかもしれないけれど、それにしたってあまりにも花道感がなさすぎて、最後までノイズになっていた。

③魚住パートのカット。山王戦はかなりスピーディな展開で描かれる。それ自体は良いと思った。ただ、魚住パートがカットされているのはやはり気になる。「あ…そこ魚住出てこないんや…」みたいな。なんだろう…別の世界線を見ているような、そんな違和感があって、これもやはりしばらくはノイズになった。

④やたら辛気臭いリョータの母親。リョータの物語を深掘りするためには必要なのだろうけれど、明らかなコンフリクト(ハードル)として出てきていて、せっかくアニメ的な記号性を廃しているのに、やたらと記号的に感じた。「ああ、はいはい、そういうキャラクターね…どうせ最後は和解するんでしょ」っていう。たとえばタッチみたいに兄弟の物語を中心に処理することもできたはず。しかも原作には出て来ないから、当然、山王戦に物語が有機的に絡んでくるわけでもない。

⑤エピローグ。これはノイズってより蛇足に感じた部分。ファンサービスなのか営業的な考え(後日談を描いてますよっていう)なのか知らんけれど、全然余計。ものすごく嘘っぽく感じた。

 まあ、それくらいかな。文字の分量的にバランスが悪いけれど、そういう欠点を含めても一見の価値がある作品だとは思う。色々と考えさせられる。

☆☆☆☆★(4.5)



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