犬王
監督:湯浅政明
概要
『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』などの湯浅政明監督が、古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」をアニメ化。室町時代に人々を魅了した実在の能楽師と、その相棒となった琵琶法師の友情を描く。脚本を『罪の声』などの野木亜紀子、キャラクター原案を「ピンポン」などの漫画家・松本大洋、音楽を『花束みたいな恋をした』などの大友良英が担当。ボイスキャストは、犬王をロックバンド「女王蜂」のアヴちゃん、相棒の友魚を『苦役列車』などの森山未來が務める。(シネマトゥデイより)
感想
題材の問題なのだろうけれど、序盤から陰鬱な場面が続く。ほんちゃん(本多力)が出てくるシーンが唯一ほわっとさせる。質は高い。作画も美術も音楽も何もかも。でも、中身がなんにもない。なんだろうこれは。
「フェス」と宣伝されている本作。それはよくも悪くも当たっていて、ライブシーンがいくつかあるのだけれど、音楽の進行と共に物語が進行していくわけではないから、本当にただのライブシーンという感じ。物語がクライマックスに向かってドライブしていく感覚もなく、わりと淡々と進んでいく。
鹿苑寺のライブシーンはちゃんと物語も進行するし良いんだけれど、なんだろうな。すごい湯浅さんらしいダンスシーンがあって(それ自体は良いんだけど)、ちと置いてけぼりにされている感覚にもなった。たとえて言うなら、「平家物語」の途中でいきなり「クレヨンしんちゃん」になった感じ。
それ以前のダンスシーンにもブレイクダンスやフィギュアスケートが織り交ぜられる。分かるよ、現代風アレンジも否定するわけじゃない。だけど、足利時代の京都を舞台にしているなかで、それそのものを見せられると「目の前で行われているこれはいったいなんだろう?」という気にもなる。たぶん、抽象化が足りてないんだ。
物語自体も感情移入しにくい。分かりにくいわけじゃない。僕は歴史背景もそれなりには押さえている。でも、「いったい何を見させられているんだろう」という感覚が頭の隅によぎる。感情の置き所がわからない。感情がどこにもアースしない。
内面描写がないところは、たとえばモノローグを多用する庵野/新海的なものへのアンチテーゼとして捉えられないこともないし、それを能表現とのパラレルとして見れば「文学的」には評価されるのかもしれない。でもさあ…そんなの知らんがな(←)
一応、感情的にはエピローグのところでオチをつけている感じなのだけれど、付け足し感が拭えない。あの部分は物語上の必然性がない。あれだったらむしろ、鹿苑寺のところで本編終わってしまって、あとはナレーションにしてあのエピローグにつなげてしまった方が納得感はあったと思う。
(追記:原作のあらすじを読んだけれど、エピローグのところはやっぱり異なっているみたい。原作の方だったら僕は納得感ある。物語としてちゃんとオチている感じがする)
湯浅監督応援してるんだけど、これはいまいちノレなかったな、僕は。
☆☆☆☆(4.0)
劇場アニメーション『犬王』劇中歌「腕塚」歌詞付き映像 5月28日(土)全国ロードショー!