「事故」
これは事故なんだと分かってる。
いつでも誰にでも起こり得ること。平穏な日常の中に潜んでいるもの。
人によっては軽傷で済む場合もあるだろう。でも、僕はそういうものに耐えられない。だからこそ、コメなんてしない筈だった。心を閉ざしていればそこに居られる。そういう風に出来ている。
ちょっとした油断が大怪我のもと。子犬は事故が起こった道にはもう近寄らない。何もないと分かっていても、もう怖くてどうしようもない。別の道を行けば、そこにはきっとまた新たな景色が広がっている。それで充分だ。
時には、あの道で仰いだ春の陽射しの暖かさや、真冬に咲いた桜並木の美しさを思い出すだろう。呼んでくれる度に滑らかになった呼び方や、ニコッと笑って手を振ってくれたことなんかを。それがどれだけ僕の心を温めたかを。
そしていつか、こんな駄文を書いてやり過ごしている内に、そうしたものも全て忘却の彼方で凍っていく。
そういう風に出来ている。