よつばと徒然 | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

よつばと徒然

 『よつばと!』は進むのが遅い。大抵、一話につき一日ずつしか進まない。2003年から連載されているのに、作中ではまだ4ヶ月くらいしか進んでいない。そして、その「遅さ」こそが『よつばと!』の真髄だ。「いつでも今日が、いちばん楽しい日。」…描かれるのは1日1日のかけがえのなさ。

 作者あずまきよひこの前作『あずまんが大王』は「空気系」の嚆矢とされる作品だ。『けいおん!』に代表される「空気系」の特徴として、氷川竜介さんや小森健太朗さんは物語の排除、無時間性を挙げている。物語上の目的が設定されず、登場人物たちはハードルを乗り越えることもせずに――したがって成長もせずに――、ただ平和な日々を謳歌する。そうした日常を描いたのが空気系だと。

 その指摘が的を射ているかはここでは置いておこう。

 重要なのは『よつばと!』がそうした批判への答えを(すでに)提示しているように見えることだ。『よつばと!』では「空気系」作品と同様に、物語上の目的や乗り越えるべきハードルが設定されることはない。

 その代わりに、時間のリニアな性質、不可逆性が強調される。同じ時間は二度と繰り返されることはない。よつばは「牛乳」がどうやって出来るか、「つくつくぼうし」がどういう生き物か、いちど知ればそれを忘れてしまうことはない。日々は蓄積されていき、よつばはゆっくり成長していく。

 気球を見に行ったよつばは、時間つぶしのためにやっていた筈のソリ遊びに興じて、帰ってきた気球に目を向けようともしない。よつばの前では目的も時間つぶしも等価だ。あらゆるものは他の何かのために存在するのではなく、それ自体として存在している。

 物語上のハードルを乗り越えていくことで主人公が成長するドラマにあっては、ハードルはひとつの過程に過ぎない。でも、「何でも楽しめる」よつばの前では、ハードルはその意味を失う。むしろこう言ったほうが良いかも知れない。よつばの前では過程でさえもそれ自体の楽しさを持つ。

 だからこそ、よつばは「無敵」なんだ。二度とは訪れない日々を楽しみながら、よつばは一日一日ゆっくり成長していく。