1917 命をかけた伝令
監督:サム・メンデス
概要
第1次世界大戦を舞台にした戦争ドラマ。戦地に赴いたイギリス兵士二人が重要な任務を命じられ、たった二人で最前線に赴く物語を全編を通してワンカットに見える映像で映し出す。メガホンを取るのは『アメリカン・ビューティー』などのサム・メンデス。『マローボーン家の掟』などのジョージ・マッケイ、『リピーテッド』などのディーン=チャールズ・チャップマン、『ドクター・ストレンジ』などのベネディクト・カンバーバッチらが出演する。全編が一人の兵士の1日としてつながって見えることで、臨場感と緊張感が最後まで途切れない。(シネマトゥデイより)
感想
全編ワンカット撮影(風)が話題のこの『1917』。冒頭、稜線上の木々。なんとなくアンゲロプロスを思い起こさせる。そう言えば、アンゲロプロスも「長回し」だ。オマージュかしら…? 違うかな。木々の美しさが印象的。
『大脱走』『プライベート・ライアン』『フューリー』…戦場を描いた映画は数あれど、第一次大戦の戦場を描いた映画はあまり記憶にない(近年だと『戦火の馬』くらい?)。第二次大戦とは異なり地味な塹壕戦。序盤は名作『西部戦線異状なし』を彷彿とさせる。
ただ、この主人公は伝令だ。命令書を携えて戦場を駆け巡る。長回し撮影されることで、カメラは戦場の立体地図を描いていく。そこで思い出したのはグーグル・ストリートビュー。なんかこれ、「映画」ってよりも、「地図」みたいだな…と。
とは言え、モンタージュの印象がないかと言えば、「あ…いま繋いだな…」みたいなところは実はちょこちょこある。たとえば画面の前を何かが横切った時とかね。そうしてまた次のアクションや展開が生じる。映画全体も大きく3つのパートに分かれる。昼、夜、朝とそれぞれの画面の印象はかなり異なる。そんなこんなで、リアルタイム・ドキュメンタリーのような感じはあまり受けない。
物語自体もどうだろうな…二人だけの伝令とか、ワーテルローでのスールトの失敗を見ているみたいで「伝令なんて1ダースも出しとけよ…」と突っ込みたくもなるが、まあそれは良い。監督の祖父から聞いた話がもとになっているらしいけれど、どことなく寓話的な印象もある。
カメラ・クルーの「不在」も寓話的な印象を強める。カメラが360度見回しても、そこには登場人物以外誰も映らない。物語映画としては当然っちゃ当然なんだけれど、実際のドキュメンタリーの場合、カメラ・クルーの存在がもっと前面に出てくる。たまに足が映ったりね。それが「不在」であることによって、この戦場がカメラによって「切り取られた戦場」ではなく、「作られた戦場」だという印象は強まっていた。画面自体は割りとグロいところもあるけれど、そうしたことも相まって、あまり生々しさは感じない。
全編ワンカット撮影で、ひとつ良いなと思ったのは、余計な脇筋が一切走らないこと。たとえば原田眞人監督のリメイク版『日本のいちばん長い日』みたいに、余計な脇筋を走らせることでテンポが悪くなる作品は山程ある。「その家族の描写いらないでしょ…」みたいなね。まあ、人間的な膨らみをもたせたいのかも知れないが。
この『1917』はモンタージュを用いない=別の場所を映せないという制限のなかで、そうした人間的な膨らみをもたせている。懐にある家族の肖像写真…目の前の景色とリンクする故郷。そして一見、何気ないバカ話。次に似たようなバカ話を聞いた時に、その会話を思い起こさせるところなんかは本当にうまい。
余計な脇筋=ノイズがないことで没入感は高められる。そうして、後半はどんどん引き込まれていく。
☆☆☆☆★(4.5)
1917 Final Trailer (2019) | Movieclips Trailers