『天気の子』(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

『天気の子』
 
監督:新海誠
 
概要
 『秒速5センチメートル』などの新海誠監督が、『君の名は。』以来およそ3年ぶりに発表したアニメーション。天候のバランスが次第に崩れていく現代を舞台に、自らの生き方を選択する少年と少女を映し出す。ボイスキャストは、舞台「『弱虫ペダル』新インターハイ篇」シリーズなどの醍醐虎汰朗とドラマ「イアリー 見えない顔」などの森七菜ら。キャラクターデザインを、『君の名は。』などの田中将賀が担当した。(シネマトゥデイより)
 
感想
 冒頭、主人公のモノローグ。第一印象は「ヘッタクソだなあ…」
 
 序盤、この世界のリアリティのレベルがどの辺に設定されているのかが掴めず、やや戸惑う。超常現象が起こる世界なのかそうでないのか。起こるとすれば、それはどの程度の頻度で起こり、この世界の住人はそれをどのように受け取っているのか。
 
 世の中には真顔で「私、晴れ(雨)女です」なんて言う人がいる。僕はいつも思う。「それ、どこまで本気で言ってるの?」
 
 それ(リアリティのレベル)が掴めた辺りで、また別の問題が生じる。余計なコンフリクト。物語のペースが上がらない。スポンサー商品の過剰なPR。美しい場面はあるものの、正直、この前半はやや退屈だ。
 
 作品全体の印象は『雲の向こう〜』のようでもあり、『星を追う〜』のようでもあり、『言の葉〜』のようでもあり、はたまた『バケモノの子』のようでもあり、『ペンギンハイウェイ』のようでもあり、「ドラえもん」のようでもあり…。なかなか、この作品自体の「肝」を見つけられない。
 
 中盤以降、主人公が様々な妨害に遭い「反社会的」になっていく。僕は「新海さんがダークサイドに堕ちてしまった…」という感想を抱いた。『君の名は。』に対する数々の酷評を気にしないように見せていたけれど、新海さん、やっぱ気にしてたんだろうなあ…って。
 
 カラオケシーンで「恋チュン」が登場した時には少し驚いた、けれど、そういう文脈で考えると理解もできる。AKBも「国民的」と呼ばれる一方で数々の酷評にさらされてきたグループだ。新海さんは意外とAKBに親近感あるのかもなあ…とか。(新海さんに公演プロデュースしてもらおう!←)
 
 終盤の展開はなかなか思い切ったな…という印象。悪くない。「セカイ系」作家の代表格と見なされてきた新海さんが、かなり意識的に「世界」という言葉を使う辺りは、「セカイ系」(とそれに対しての批判)に対する彼なりの答えが見て取れるようで興味深い。
 
 話としては、『ペンギンハイウェイ』の方が100倍も良く出来ていると思う。文学としてもそうだし、『天気の子』は作劇も稚拙だ。それでも、そんな作劇の稚拙さも(ひいては声の拙さも)、最終的には作品主題の一部として回収している。「どんなに拙くてもいい、自分たちなりのやり方でやりなよ」、と。
 
 終わりよければすべてよし。ラストシーンは新海さん史上もっとも美しいシーンだ。
 
☆☆☆☆★(4.5)