検察側の罪人
監督:原田眞人
概要
『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』などの原作で知られる雫井脩介のミステリー小説を、木村拓哉と二宮和也の初共演で映画化。東京地方検察庁を舞台に、人望の厚いエリート検事と彼に心酔する新米検事がある殺人事件の捜査をめぐってすれ違い、やがて二人の正義がぶつかり合うさまが映し出される。『突入せよ!「あさま山荘」事件』などの原田眞人監督が、正義の意味を問うドラマを骨太に描き出す。木村と二宮の演技対決に注目。(シネマトゥデイより)
感想
原田眞人監督は、僕が信頼する数少ない日本人監督のひとりだ。新作が公開されるたびに見に行っている。これまでの評価の平均点は4.1。
1.
原田監督の骨太演出vsキムタクの気取った芝居…という冗談は置いておいて、鼻にかかった演技が気になったのは最初くらいかな。それもほとんどわずかに嗅ぎ取れる程度だった。この勝負、原田監督の勝ち←
原田演出のもうひとつの特長はカメラの回し方だ。「芝居は出来る限り流れを止めないでとうして撮って行くのが基本で、ある意味では柔軟なドキュメンタリー的な方法で役者・芝居を捉えていく」(http://www.mpte.jp/otameshi/images/8月号お試し記事関ヶ原.pdf)
こうした撮り方をしているから、「よーいドン」で芝居をはじめたようなわざとらしさがない。撮影された時間の前後にも、あるいはカメラのフレーム外にもちゃんと劇中世界が広がっているように感じられる。
同じ原作者の作品を、ぼくは以前ボロカスに書いている。監督次第で映画はいかようにも変わる。ただ…終盤は少し筋がとっ散らかってるかな。そのせいか、最終的に主人公たちの感情にいまいち乗れなかった。
2.
ひとつ気になったのは、「インパール」だとか、「ホテル」だとかって「記号」がなんだか話から浮いているように見えたこと。「これ本当に必要か?」と思って、家に帰って調べたら、どちらも原作にはない要素らしい。やっぱりね。
「インパール」と聞いてイメージするのは、無能な指揮官が、無理に押し通した、無謀な作戦のせいで部下の屍の山が築れていったこと。要は、やる気のある無能は、有能な敵よりタチが悪いって話。でも、この映画は別に、無能な指揮官のせいで部下の屍の山が築れていく話ではない。
それを「無理」やり繋げようとするから、いまいちピンとこない。(追記:これがたとえば、『踊る2』の「どうして現場に血が流れるんだ!」の場面だったら、インパールの喩えも理解できる)
もうひとつ。映画では「ホテル」なる存在が付け加えられている。その理由ははっきりしていると思う。このホテルは、劇中の描写から明らかに例の「アパホテル」を連想させるんだ。
ただ、描き方がなんだか妙に気色悪い。意見が合わない相手はすべて気色悪い悪者ですか。気に食わない相手をわざわざ自分の作品に出してこき下ろすのって、良いとか悪いとか以前に、行為としてすげえダサくない?
しかも、明らかに「アパ」を連想させるけど、劇中では「ホテル」だからいくらでも言い訳はできるわけだ。それって、全然フェアじゃないよね。「インパール」の話をしたいなら、いま自分がやっていることを振り返ったほうが良いんじゃないの?
ま、そういう点を差し引けば、映画としては普通に面白い。あらすじを読んで気になったら、見に行っても損はしないだろう。あ…あとひとつ文句あった。ラブシーンの撮り方が下手←
☆☆☆☆(4.0)
追記:
原作を手に入れて該当箇所を調べてみた。
丹野議員の自殺動機もほとんど180度変わっている。原作の彼は、派閥の長である義父高島進に惚れ込んでいる。「俺がこれから三十年、どんなに研鑽を積もうと、あんなふうにはなれない。持って生まれたリーダーの気質だ。だからな、俺は何とか義父に、総理の仕事をやらせてみたいって思ってるんだ」
だからこそ、丹野は義父の「多少の粗」にも目をつぶるし、最終的には義父を守るために自ら死を選ぶ。自殺する場所は議員庁舎だ。ところが、映画では当てつけのように妻の友達の経営するホテルで自殺する。