妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III
監督:山田洋次
 
概要
 『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』などで知られる山田洋次によるコメディードラマのシリーズ第3弾。両親と同居する長男の嫁が家出したことから、平田一家に思わぬ騒動が起こる。橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優といった前2作のキャストに新たに落語家の立川志らくが加わり、丁々発止の掛け合いを見せる。(シネマトゥデイより)
 
感想
 「偉大なるマンネリ」というのは「男はつらいよ」のためにあるような言葉だ。この「家族はつらいよ」も三作目を迎えて、ようやく世界観がこなれてきたように思う。
 
 もうさ…西村雅彦が寅さんにしか見えんのよね…と言うか、西村さんを寅さんだと思って見ると、とても面白い。ちと無理やりに見える家族喧嘩の場面も「とらや」だと思ってみれば微笑ましい。寅さんが帰ってくるたび喧嘩するんだよね。お約束で必ず差し込むから、あれも時に無理やりに見えたもん。
 
 役回り的にはタコ社長が林家正蔵で…ひろしが妻夫木聡で…さくらは立ち位置的には中嶋朋子なんだけど、キャラ的には蒼井優かな…とか。中嶋朋子はキャラ的には一時期出ていたタコ社長の娘(美保純)っぽいかな。おいちゃんはもちろん橋爪功で…。
 
 ただ、吉行和子だけは何か違くて…立ち位置的にはおばちゃんっぽいんだけど、キャラ的には夏川結衣の方がむしろおばちゃん(+さくら)っぽくて。吉行和子だけ「とらや」に居ないキャラクターの感じがして。こういう言葉を使うのはなんだけど、なんだか一種の「モンスター」に見える。だって何考えてるか分からんだもん。
 
 逆に言えば、吉行和子の存在こそが、この映画を「男はつらいよ」ではなく「家族はつらいよ」になさしめている最大の要因なのかも知れない。どこか記号的で実在感のない子供たちよりも、吉行和子のあの不気味さこそが、現代を象徴している。
 
 それはともかく…この映画はそういう風に「男はつらいよ」との比較で楽しむことが出来る。だからこそ、あのクライマックスのシーンは妙に感慨深かった。これ、寅さんだったらきっと…と、思うとね(※ネタバレ反転:「男はつらいよ」だったらきっとね…寅さんは黙って去って、そしてヒロインには新しい良い人が見つかるんだ)。
 
 家族像が失われていく時代にあって、それでも家族を描くという点で是枝監督と山田監督は共通しているけれど、そのアプローチは正反対。山田監督の「家族はつらいよ」がどこかでまだ伝統的な家族像というのを引きずっているのに対して、是枝監督はすでにそういうのが成立しなくなったところからスタートする。
 
 そういう意味では、じつは「男はつらいよ」の方が「家族はつらいよ」よりラディカルな部分があるようにも思えて…そこもまた興味深かった。
 
 西村さんがドライブする車の窓越しに見える夜の山並みが妙に印象的だったな…ああいうシーンがひとつでもある映画はいい映画だと思うんだよね。
 
☆☆☆☆★(4.5)