50回目のファーストキス(2.5) | 想像上のLand's berry

想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
50回目のファーストキス 
監督:福田雄一
 
概要
 2004年製作のアダム・サンドラー、ドリュー・バリモア共演作『50回目のファースト・キス』を原案としたラブストーリー。新たな記憶を一夜で失ってしまう美女と、彼女に心奪われて何回もアプローチする青年の姿を描く。メガホンを取るのは『銀魂』などの福田雄一。ドラマシリーズ「勇者ヨシヒコと魔王の城」などで福田監督と組んできた山田孝之、『散歩する侵略者』などの長澤まさみが、主人公の男女を演じる。(シネマトゥデイより)
 
感想(ある程度ネタバレします)
 「50回目のファーストキス」は50回見た…というのは冗談だけれど、それくらい好きな映画だ。アダム・サンドラーにドリュー・バリモア、軽快なラブコメでありながら、どこか人生の陰影も感じさせる。
 
笑えて、しんみりして、心に沁みて・・・この映画はまさに傑作。個性豊かで、コミカルで、そして心の温かい登場人物たち・・・アダム・サンドラーとドリュー・バリモアはハマリ役。ともすれば暗くなりそうな設定を(監督/役者ともに)優れたバランスでこなしている。この手のラブコメ作品の中でも、特に優れた作品のひとつだと思う。
 
 別の映画なんだから比べるな…というのは土台無理な話で。リメイク作品って、巧さの差がはっきりと出てしまう。演出のリズム、画の作り方、トキメキ感、洒落っ気、音楽の使い方…正直、福田監督って下手なんだな…って。
 
 何より、余計な要素が…とくに序盤は「いつもの福田節」が邪魔っけ過ぎて仕方なかった。そこだけ深夜ドラマになったような、そんな違和感が没入を阻害する。作品のリズムも損なっているし、「それ何のためにやってるの?」って。(山田くんと長澤さんは下手とは思わないけれど、やっぱりオリジナル版とは差があったな…)
 
 福田さん自身による脚本もな…基本的にはオリジナルに沿っているんだけど、大きなところでは主人公の属性が「水族館」から「天文台」に変えられている。
 
 星がどうとか、いかにも「ロマンチック」に見せているけれど…でもさ、オリジナル版のルーシーがヘンリーに惹かれるのは、一部には彼から「魚の匂い」がするからだ。パパが漁師のルーシーにとっては安心できる匂いなんだよね。これは結構重要で、毎日記憶を無くす彼女は、ヘンリーと毎日初対面の感覚になるけれど、「魚の匂い」で安心できるって側面もあるんだ。
 
 それを「星」の話にしちゃったらさ…なんかただの…
 
 他にもある。この脚本は、細かいところでも気が利いていない。たとえば、食堂のおばちゃんがビデオメッセージで言うセリフ。He is …okay(彼は…うん、大丈夫よ)が、He is good guy(彼はいい奴よ)に変えられている。オリジナルも字幕は「いい奴」になってたし、字面からは些細な違いかも知れない…でも、このニュアンスの違いはとても大きいと僕は思う。
 
 「okay/彼は大丈夫」…ってのは、あのおばちゃんがルーシーを大事にしていて、ずっと面倒を見てきて、「うん、彼は大丈夫よ」って、そういう保護者的な目線がある。もともと、ルーシーの亡くなった母親の親友だからね。「okay」って一言は、それだけの背景を感じさせる。でも、「good guy/あいつはいい奴よ」ってのは、誰でも言えるセリフでしょ? そんなのは友達でも誰でも言える。そこは決定的に違うんだ。
 
 「sometimes life isn't very fair/時に人生は不公平だけれど…」も心に残っているし、あのおばちゃんは名言が多いんだよね。ああいう地味な役どころにどれだけ豊かな彩りを与えるかってのは、その作品の深みに関わっている。ぼくがオリジナルを評価するのは、そういう世界の作り方が本当に優れているからだ。
 
 オリジナルは人生の陰影と人々の優しさに満ちている。色んな人種の人がいて、色んな人生がある。その全てを制作者は愛してる。でもこれは…。その年に何が起こったかのビデオも時事問題ばかりだし、弟のLGBT弄りも悪趣味だし。同じ本を使っても「人生」が全然描けてないんだよね。僕はこれを見ていた間、「ああ…早く帰ってオリジナル版見たいな…」って、そんなことばかり考えていた。
 
 『アオイホノオ』なんかは評価しているけれど、この前の『斉木楠雄』も酷かったし…福田監督も堤幸彦や三池崇史と同様の「粗製濫造機」と化したかな…と。邦画がこうなのは「予算」の問題じゃなくて、作り手の才能と哲学と熱意の問題なんだって痛感する。そういう出来。
 
☆☆★(2.5)