三度目の殺人 (2017)
監督:是枝裕和
概要
第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人と交流するうちに動機に疑念を抱くようになり、真実を知ろうとするさまを描く。弁護士や検事への取材に加え、作品の設定通りに実施した模擬裁判で出てきたリアルな反応や言動などを脚本に反映。福山ふんする主人公が弁護を担当する殺人犯を、役所広司が演じる。(シネマトゥデイより)
感想
一貫して家族を描いてきた是枝監督が、今度は殺人事件をテーマにしたミステリーに挑む。これほど約束された作品というのも、今日日まあ珍しくはないかも知れない←
予告編を見ても分かるように、どこか東野圭吾『容疑者Xの献身』を連想させる(ガリレオ先生も出てるしね)。ただし、『容疑者X』の焦点が「犯行」(その背後にある石神のピュア)にあるのに対して、こちらの焦点は役所広司の「動機」にある。
ふむ…。さすがに是枝監督らしく、しっかりとした作り。俯瞰の構図が美しい。
ただ…肝心の物語面で『容疑者X』に負けてしまっている。「家族」とか、「裁判制度への疑問」とか、「スーパーナチュラルな部分」とか、そういうものがすべてノイズになってしまっている。あらゆる要素が「石神のピュアさ」へと収斂していく『容疑者X』とは雲泥の違いだ。
もちろん、方向性も違うし、単純に比較はできない。けれど、物語の吸引力とか鑑賞後にズシンとくる重さでは、(とくに舞台版には)明らかに及ばない。それに代わる何かも提示できていない。
いや…分かるよ、真実の不確実性とか…なんだろうな…やりたいことは分かる。でも、たいして面白いと思えない。「だからなに?」って、その先が聞きたい僕は。この映画にはその部分がない。言いたいことがないのに映画を撮っている。そんな感じがする。
役所広司さんは相変わらず上手いんだけれど、「器」であるところのこのキャラクターには感情移入できない。そういう作りにはなっていないのは分かるのだけれど、感情移入できないから、こっちは、真実がどうであれ、動機がどうであれ、「まあどうでも良いや」となってしまう。真ん中(動機)が空洞になっているから「読み」は開かれている筈なのに、タイトルでその「読み」を限定しちゃっている*ところもマイナス。
☆☆☆★(3.5)
*ぼくなりの「読み」(ネタバレ反転)
役所広司は「器」…いわばイタコみたいなもんだから、人々の願いを自然と反映して殺人を犯してしまう。一度目は故郷の人々の願い、二度目は広瀬すずの願い…そして、三度目は福山雅治の願いで自らを殺してしまう…。それは言い換えれば、二度目の犯人は広瀬すず、三度目の犯人は福山雅治…ということでもある。この映画では、そのどちらもが真実。