関ヶ原(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
関ヶ原 (2017)
 
監督:原田眞人
 
概要
 小説家・司馬遼太郎の著書を、『日本のいちばん長い日』などの原田眞人監督が映画化。豊臣秀吉亡き後の天下をめぐり、徳川家康を総大将とする東軍と、石田三成率いる西軍が激突した「関ヶ原の戦い」を描く。これまで描かれてきた人物像ではない三成を岡田准一、策略を駆使し三成を追い詰めていく家康を役所広司、三成への恋心を胸に彼を支え続ける忍びを有村架純が演じる。日本の戦国時代における重要な合戦が、どのような切り口で映し出されるのか注目。(シネマトゥデイより)
 
感想
 関ヶ原…と聞いて、なにを思い起こすだろう。やはり、東西あわせて20万の軍勢が集結したあの古戦場だろうか。
 
 この映画は、その当日…よりはむしろ、それ以前になにが起こったかに焦点を合わせている。豊臣政権末期、年齢と共に頑迷になり、判断力も鈍っていく秀吉(滝藤さんの演技がなかなか凄い)。尾張出身者を中心とした武断派と、近江出身者を中心とした文治派の勢力争い。その陰で暗躍する徳川家康。
 
 ただ、必ずしも客観的に描かれているわけじゃない。司馬遼太郎さんらしく、良くも悪くも独自の視点で描かれている。これはまず何よりも、石田三成と彼の「義」を描いた作品だ。家康はほぼ完全に敵役として描かれている(僕らはどうして、かくも西軍に惹かれるのだろう)
 
 そうした主観性を反映してか、この映画もところどころ「ファンタジー」になっている。有村架純演じる「初芽」。原作にも登場するキャラクターだけれど、ここでは「伊賀もの」(=忍者)として登場する。初芽との恋…。賛否両論があるところだろう。完全にウェットな部分を排した『シン・ゴジラ』のような、そんな歴史映画を観たいと思うのも確か。
 
 ただ…これはこれで成立している。映画序盤、処刑場でのアクションシーンのカッコよさ。儚さと鋭さとを兼ね備えた有村架純の目。『アイアムアヒーロー』や『何者』でも魅せた、あの目の演技。あれは…ちょっと良いよね。あれがあるだけで、その作品がなにか少し特別なもののように思える。
 
 忍者という設定には、実際的な意味もある。有村忍者がさまざまなところから情報収集してくるおかげで、どういう状況なのか観客にも伝わるようになっている。それでも、もともとの歴史をある程度知ってないと分かりづらいかも知れない。石田治部と大谷刑部の間の「友情萌え」みたいな要素はあっても、歴女以外にはちとハードル高そうだな…ってのも確か。
 
 キャスティング。三成を演じた岡田さんは(この作品における)「愚直」とも言える三成の真っすぐさを良く表しているし、家康を演じた役所さんもさすがの一言。なんて嫌らしい家康なんだと(←誉め言葉) 逆にイマイチだったのが福島正則かな…なんだか必要以上に小物に見える。
 
 印象的だったのが東出昌大さん。小早川秀秋のイメージに新たな色を注ぎ込んでいる。これ、脚本の段階でキャラクター解釈を原作と変えているよね。たしかに愚かで優柔不断で情けないんだけれど、そういう「弱さ」をもった「一人の人間」としてきちんと描かれている。
(近ごろ、小早川秀秋のような、悪名高き「裏切もの」に惹かれるのは…まあ、理由は分かっているけど)
 
 映画としては…ぼくはこれ、とても良いと思う。監督が脚本も兼ねているおかげで映像のリズムも良いし、なにより演出のキレが良い。飛ぶようにシーンが流れていく。
 
 ただ、肝心の戦場シーンは…う~ん…どうだろうな。地形を活かしているのは好感が持てるし、なんとか密度を上げようとしているのも分かるけれど、やはり「関ヶ原」としてはちと迫力に欠ける。たとえば『Waterloo』(1970)のような映画には程遠い。まあ、予算の規模から言って仕方ないんだけれどね。島左近の討ち死にシーンも、シチュエーションとしては『Waterloo』を連想させるんだけれど、ちとショボかった。
 
 
 あとはね~…石田隊を中心に描いているから仕方ないんだけれど、見たかったシーンがいくつか出てこない。たとえば、小早川が裏切って大谷隊に側面から襲い掛かる(松野重元はそれを潔しとせず戦場を離脱する)。大谷隊も裏切りを予期して備えているから、一時は小早川隊を押し返す。でも、脇坂などの四将が小早川に同調するに及んで、戦線を支えきれずに瓦解する…そういうシーンとか。あるいは、伝説の「島津の退き口」(敵中突破)も。あれ見たかったのに。
 
 2時間半に及ぶ比較的に長い映画でも、僕はもっと長く見たくなった。もちろんそれは、それだけ出来が良い(世界の構築がうまくいっている)ということの裏返しでもある。
 
☆☆☆☆★(4.5)