特別な瞬間(欅に再びノックアウトされた話) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


「欅に再びノックアウトされた話」

 欅坂46のアルバムリード曲『月曜日の朝、スカートを切られた』…先週放映された「音楽の日」で初披露されたのですが…どうやら賛否両論だったようです。「変なダンス」とか言われてね。

 ぼくも『不協和音』はわざとらしさがあるというか、あまりに演技演技した感じがして、いまいちハマらなかったんです。ただ、『月曜日の朝~』のパフォーマンスには打ちのめされました。「ああ…これは凄い…」って。MVも公開されましたが、ぼくはこの「音楽の日ver」の方が圧倒的に好きです。

 それはなんだろうな…世界観が『サイマジョ』と繋がっているとか、色々と深読みも出来ると思うんですが…

 それ以前に、明らかにこの子たちはなにかを表現しようと…なにかを言わんとしていて、だからこそ僕らはそこから目が離せなくなる。足を棒にするシーンでは、なーこ(長沢)の動きがあまり上手くいってなくて、生まれたての子鹿みたいに見えるんですが、それでも何かを表現しようとしていることは分かる…。あの振り付けから「景色」が見えるというのかな…。そこが何より心を打たれたところで。 

 コンテンポラリーダンスの発想と近いと思うんですが、演劇的な動きを取り入れていて…↓


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 たとえば、このシーンでは、あかねん(守屋)と菅井様が、てち(平手)を抱えて地面に降ろしています。ただそれだけの動きなのですが、それをでき得るかぎりの緊張感をもって行うことで、目を離せなくさせます。日常の動きそのものを特別なものにするというかな…てちの重さ…人ひとりの(…命の)重さを感じさせます。
  
 ナニゲナイコトデモ、じつはそこにこそ特別なものがある…。

 それはまあ、理屈っぽい話です。もっとグッと来てしまったのは、そのあとのシーン。まず、地面に横たわるてちを、オダナナ(グレーの制服)がスッと指差します↓ 

 
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 これも本当になにげない動きなんですけどね。でも、「景色」が見えるというか…。人々が行き交う都会の雑踏のなか、誰かが立ち止まって、じっと指を差していたら、みんなどうしたってそっちの方を見てしまうじゃないですか(いや違うな…もう少しこう…上手く言えないけれど、指差しという行為それ自体にあるなにか…)。この床のペイントもね、横断歩道みたいに見えるから、いっそうここが都会の雑踏みたいに見えます。

 またそのあとが…ここがぼくがいちばん心を打たれた…撃ち抜かれたシーンだったのですが…メンバーはしばし、倒れたてちを眺め、そうして踵を返していきます。ただ…そこで、右端にいるモナ(志田)だけが…(いや、実際は「だけ」じゃないのですが心象的には)もなだけが、他の人より少しだけ長く眺めて…そうして踵を返すんです↓

 
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 ぼくは(正しい語義とは別に)「残心」という言葉が頭に浮かびました。

 たしかに、意味を「読む」ことはできるんですよ。たとえば…いくら衝撃的なものでも(それはてち自身とも欅自身とも読むことができますが)人々はすぐに忘れ去ってしまって、違うところに目を向ける。でもそれは別に一様じゃなく、人それぞれに違っていて。なんとなく引っ掛かって、なんとなく気持ちを残して…でもやっぱり他の人と同じように去っていく人もいる。だけど、その「ちょっとの引っ掛かり」のなかに、じつはなにかとても大事なもの…人々が日々の生活の中で忘れかけているものがあるんじゃないか、とかね。

 一見、一様に見えるけれど、じつはちょっとずつ違っていて、そのちょっとの違いの中に、なにかとても大事なものが隠されている…って、それ自体もまた、「制服アイドル」である欅っぽいんですが(つまり、制服アイドルである欅は一見、一様に…みな同じように見えるけれど、じつはちょっとずつ違っていて…って話)。

 でもね…それ以上に、単純にひとつの景色として、この場面に心を撃ち抜かれてしまったんです。

 「特別な瞬間」ってのがあると思うんです、別にそれは必ずしも大事件とは限らなくて。なにげない日常の、なにげない一瞬にも、「特別な瞬間」というのはありますよね。心に刻まれて忘れられなくなる瞬間がね。優れた写真家は、そうした「特別な瞬間」を切り取ることができます。

 ぼくは、このシーンからも、そうした写真家の作品と同じような何かを感じ取ることができると思うのです。こういう特別な瞬間を意図的に創り出せる…「ああ、この人(振り付けのTAKAHIRO氏)は天才だなあ…」って。あまりにも平凡な言い回しですけどね。

 欅を見ていて思うのは、TAKAHIROさんは自身の「表現の場」として、欅を選んだのだろうな…ってこと。こういう才能が、「表現の場」として選んでくれた…それ自体が、とても稀有な、恵まれたことだと思うんです。

 アイドルで「表現」なんていうと、なんでもかんでも自分の色に染めちゃって、本来持っていた良さが消えてしまうような悪しき例が思い浮かびますけどね。でもTAKAHIROさんは違います。ちゃんとアイドルに…欅に向き合って、ちゃんと欅を分かった上で表現しようとしている。だからこそ、化学反応というかな…ここでしか見られないものが生まれていて。

 『月曜日の朝~』では、顔をほとんど見せないというアイドルらしからぬ振り付けをしていますが…でも、それも「アイドルらしからぬ」という形でアイドルと結びついているんですよね。しかも、それがただ「逆張り」になっているんじゃないところがミソで。髪で顔を隠していたところでは、逆にカメラを見つめる眼差しが浮かびあがるようで、強く印象に残りました(土生ちゃんの目が強い!)。

 それに、普通に顔を映せば、それはたしかにかわいいわけですが、でもファンはすぐにだれがだれか把握できちゃいますよね。ところが、顔が隠されていると、繰り返し見ないと誰が誰か分からない。今回は欠席者が居たので余計にそういう「謎解き」要素も増していました。

 (現状、欅の場合、選抜メンバーが固定されているので、「顔が映らなかった」という不満は48グループよりは少ない筈なんですよね。「見つかった見つかんない」って話は別の曲でもできるわけで、だからこそ、この曲でこういうことができるというのもあると思います)

 もうひとつ、これは「逆張り」じゃないと思えたのは、虹花(石森)のことで。今回、あの子、すばらしいじゃないですか。いままで割りと地味…というかな、ぼくのなかでは、そういう印象だったんですが…でも、今回はすばらしいと思うんです。ワンショットで抜かれたということもあって、その顔が…表情が強く印象に残りました。

 それも、今回ほとんどみんなの「顔」が映っていないってことが大きいんだろうなって。ほとんど顔が映っていないところに、ぱっとワンショットで抜かれるから強く印象に残るというね。しかも、あの子はこういう表情…憂いを秘めたというか陰のある表情が似合うじゃないですか。これまで「地味」な印象に結び付いていたところが、ここでは、すごくプラスに働いていました。

 ちょっと手放しの褒めようですけど…そんなこんなで、ぼくは再び、欅にノックアウトされてしまったのでした。(公式MVと違って、ちゃんとした形で載せられないのが残念ですが…)