SING/シング(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
SING/シング (2016)
SING
監督:ガース・ジェニングス
 
概要
 全ての人の中にある輝ける部分を見いだすことをテーマに、動物たちが歌唱コンテストで奮闘する姿を数々のヒットソングに乗せて描くミュージカルアニメ。劇場に活気を取り戻すために開かれた歌唱コンテストで、個性的な動物たちが思い思いの歌を披露する様子を映す。声の担当は、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーンら俳優陣をはじめ、『テッド』シリーズでテッドの声も担当するセス・マクファーレン監督ら。なじみの深いヒット曲の数々に盛り上がる。(シネマトゥデイより)
 
感想
 ミニオンズのスタッフが作った…と言えば、昨年の『ペット』。その公開時に流れていた予告が、この『シング』だった。『ペット』のあの出来の悪さ…というか、あのテンプレ感からすると、この『シング』もあまり期待できそうにないなあ…と。あまり気乗りがしていなかった。
 
 これ…サイコーじゃないっすか(≧∀≦)ノ
 
 昨年、同じ動物アニメの『ズートピア』というディズニーの歴史的傑作があったわけだけれど、単純なCGの質だけで見るならば、さすがにディズニーには敵わない。でも、これは見せ方に工夫がある。冒頭、いかにも作り物な舞台から映像は始まる。カメラはそこから劇場→部屋→街へと移っていく。もうそこにはちゃんと世界がある。ところどころで見せる、飛ぶようなカメラワークも心地よい。スピーディでアクロバティック。
 
 雰囲気的には、どこか80年代の(今よりも、もう少しだけ色んなことがクリアで、ドラマティックで、メロディアスだった80年代の)ハリウッド映画…たとえば『コーラスライン』とか、『摩天楼はバラ色に』とか…あの辺の薫りがする。実写でやるとちと古臭く感じられるような古典的な物語も、最新の技術を用いたCGアニメでやれば新鮮に感じられる(『ペット』と方法論は同じ筈なのに、なぜこうも違って感じられるんだろうか…歌かな…)
 
 たとえどんな境遇でも、どんな立場でも、どんな容姿でも、どんな格好でも、どんな性格でも、どんな年齢でも、どんな人生でも、歌とか演奏とかダンスさえ出来れば(あるいは出来なくても)、人の心を動かすことが出来る。言ってることは非常にシンプルなのだけれど、そうした構図が明確にあることで、この映画には強靭さが生まれている。
 
 その一方、ももクロだかPerfumeだかAKBだかって日本のガールズグループが登場して、きゃりーぱみゅぱみゅの曲を披露する辺りは、ちとシニカルな視線も感じられる。プレーンなスキルじゃなくて、カラーリングとか揃いの衣装とか…要はユニットとしてのプロデュースで見せるっていう、ある意味、他のオーディション出演者とは正反対な、異質な存在として描かれていた。ただ、必ずしも否定的な描かれ方ではなかったかな…( ..)φ
 
 ああいうの、僕はいつも複雑なんだよね…。なんて言うの、シンプルに歌が上手いのはもちろん良いと思うけれど、アイドルはアイドルで好きで。じゃあ、アイドルは音楽とは別物かって言うと必ずしもそうではなくて。あの音楽の中にアイドルがいて、歌ったりダンスをしたりすることで、生まれるものがあると思っているからで。スキルのある人からは(たとえそれが世界一上手い人だとしても)感じられないものが、そこにはあると思っているからで。
 
 まあ、それはともかく。
 
 こういう作り方だとやっぱり、それを演じる人の歌唱力が勝負になる。ぼくは吹き替え版で見たのだけれど、いちばん良かったのは、ゴリラのジョニーを演じたスキマスイッチの大橋さん。なんだろうな…派手な演出もプロデュースもなく、知名度も関係なく、ただ着の身着のままでピアノを弾いて、歌を歌う、ただそれだけで、あれだけ輝くことができる。あれだけ人の心を動かすことができる。あの父と子の関係性も含めて、あのシーンは涙がこぼれたな…
 
 長澤まさみさんのアッシュもなかなか良かった。もちろん本職じゃないわけで、ぎこちないところもあったのだけれど、逆にそこが説得力があったというか…。ジョニーからアッシュという、この辺りの流れがこの映画のピークだった。
 
 イマイチだと思えたのが、ミーナのMISIAさん。もちろん上手いんだし、こういうキャスティングをするのは十二分に理解できる。でもなんだろうな…ぼく自身、もともとMISIAさんにハマらないこともあって。上手いとは思うんだけど…。逆にプロっぽすぎたと言うか。なんだろうな…あそこだけ「コンサート」になってしまっているというか。物語の文脈から外れてしまっている感じがして、いまいち乗れなかった。
 
 もちろん、『モアナ』の日本版EDが〇〇だったというのとは、話の次元がまるで違う。英語版も聞いてみたけれど、英語版はよりクリスタルでよりソウルフルではあれど、そこまでの決定的な違いは感じなかった。まあ、ミーナのところが、もともと難しいんだよね。物語の流れ的に、もうハードルが上がるだけ上がっている状態で出てくるから、それなりに良かったとしても、なんとなく肩透かし感を覚えてしまう。曲自体もな…どうせ歌で勝負するんだったら、もっとプレーンに歌で勝負できる曲にすればよかったのにって。
 
 それに、僕らはすでに「スーザン・ボイル」を通過しているわけで。こういうシチュエーションだと、あの感じを求めてしまうんだよね。あれを聞かされてしまうと、もうなんか…何を聞かされても、聞き劣りがしてしまうというか…。あれを向こうに回して戦うとなると、よっぽど上手いこと考えないと勝負できないよね。ディズニー相手にはうまく立ち回れていたイルミネーションも、スーザン・ボイルには太刀打ちできんかったか(≧∀≦)ノ
 
 そんなこんなで、途中までは「サイコー!」だったけれど、最後の最後でちょっと下げて。
 
☆☆☆☆★(4.5)