湯を沸かすほどの熱い愛(3.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
湯を沸かすほどの熱い愛
(2016)
 
監督:中野量太
 
概要
 『紙の月』などの宮沢りえと、『愛を積むひと』などの杉咲花が母娘を演じ、余命宣告を受けた主人公の奮闘に迫る家族ドラマ。行方不明の夫を連れ戻すことをはじめ、最後の四つの願い事をかなえようと奔走するヒロインの姿を捉える。『チチを撮りに』などの中野量太が監督と脚本を担当し、物語を紡ぎ出す。母親と娘の強い絆はもとより、人生の喜怒哀楽を詰め込んだストーリーに夢中になる。(シネマトゥデイより)
 
感想(注:微妙にネタバレします)
 冒頭、煙の出ていない煙突。安定した構図。それから、銭湯の入り口に貼られた「店主が湯気のごとく蒸発したため云々」という(過酷な状況とは裏腹に軽妙な)貼り紙。街並を映した俯瞰の構図から、二階のベランダで下着を干している宮沢りえ。手に握るのは子ども用のスポーツブラ。
 
 ここまでの段階…わずか4カットほどで、これがどういうことをどういうテンションで描いていく映画なのか、明確に分かる。こういう画作りは良いよね。
 
 ふむ…( ..)φ
 
 ただ…この映画はツッコミどころが多すぎる。いじめられている娘に対して、「学校に行け」「勇気を持て」って、まあ言いたいことは分かる。けれど、それで居所がなくなって自殺とかしちゃったらどうすんだ…とか。そのあとでいじめる側があっさり引き下がるのも何だかね…。これ、いじめ問題そのものを描きたいわけじゃなくて、「スーパーお母ちゃん」が処理すべき問題を描きたいだけなんだよね。
 
 さらに酷いことに、立ちくらみしたり手痺れたり倒れちゃうくらいに調子が悪いクセに、この「スーパーお母ちゃん」は娘を乗せて運転しちゃう。「車に気を付けて」って…いや、お前が気を付けろよと。そういうところが緩いと、こちらも物語に入り込むことがとても難しくなる。さらにこの展開がダメだと思うのは、「湯を沸かすほどの熱い愛」って主題そのものにダメージを与えかねないところ。それ単なる自己中じゃんって。
 
 「家族」ってテーマは是枝監督作品を連想させるけれど、是枝さんにとっての「家族」が、否応なくそれに向き合わざるを得ない根源的なものであるのに対して、この映画ではテーマはかように物語を語るためのものに過ぎない。テーマが物語に従属しているんだよね。だから、リアリティのレベルも上に挙げたような感じで、寓話的というか。
 
 それにストーリーテリングもお世辞にも上手いとは言えない。「スーパーお母ちゃん」を描くためのエピソードとかアイデアの、単なる詰め合わせ。それぞれのエピソードやアイデアがうまくひとつに融けてない(松坂桃李君のエピソードは何だありゃ)。
 
 冒頭の画作りを含め、雰囲気は悪くないけれど、雰囲気だけの映画。こういうのが良い映画だとは、ぼくは全然思わない。
 
☆☆☆★(3.5)