サバイバルファミリー
(2017)
監督:矢口史靖
概要
『ウォーターボーイズ』『ハッピーフライト』などの矢口史靖が原案、脚本、監督を務めて放つサバイバルドラマ。電気が消滅し人々の生活が危機を迎えた世界を舞台に、生き残りを懸けて東京脱出を試みる家族の姿を描く。夫婦を小日向文世と深津絵里が演じ、息子と娘を『過ぐる日のやまねこ』などの泉澤祐希と『罪の余白』などの葵わかなが好演。ハードなテーマをユーモアを交えて描く矢口監督の手腕に注目。(シネマトゥデイより)
感想
かつて、『首都消失』という映画があった。小松左京原作。東京が謎の雲に覆われ、行き来も出来ないし、内部がどうなっているかまるで分からない。「中はどうなってるんだろう」。主人公と鑑賞者は外から、「消失」した首都を眺めることになる。『サバイバルファミリー』は、まるで『首都消失』で消えた(見えなかった)内部の状況を描いているような映画だ。ちゃんとSFしてる。
街中でサバイバル状態になる辺りは、『アイアムアヒーロー』を連想させる。とは言え、いきなりパニック状態になる『アイアムアヒーロー』のような疾走感や迫力はない。最初はみんなどこか能天気だ。そこから段々と「星空が綺麗」とか言ってる場合じゃなくなって「サバイバル」が始まるわけだけれど、中盤(というか序盤の終盤というか)にややギスギスするシーンが多いのはマイナスかな…。必要な描写なのは分かるのだけれど、貯水槽や空港、銀行の辺りの群衆描写なんかはちと冷めて見てしまった。
下の映像でも分かるように、ロードムービーの要素もあって、そんな辺りはまるで『幸福の黄色いハンカチ』。家族の絆やそれぞれの成長がそこに絡んでいく。オーソドックスな作りではあるのだけれど、でもよく出来ている。細かい描写のひとつひとつにそうした成長や絆が見て取れる。走っていくシーンの、歩いているシーンのひとつひとつの描写からそうした変化が感じ取れる。
単純に自然vs文明の構図にならないところも良い。これ、ネタバレになるから言えないけれど、「インフラとか結局、人が動かしているものなんだな…」って。クライマックス近くにそれを強く感じさせる場面があって。「止めて!」って場面ね。「あ…止まるんだ」って。あれ良いんだよな~。最終的になんか、電灯とかそういうもの(人の作りしもの)に人の心の温もりを感じるようになる。
そして、なにより妹役を演じた葵わかなちゃんが良い。葵わかなちゃんが良い。2015年の『くちびるに歌を』で「この映画はこの4人を見るための映画である!」とぼくに言わしめた4人組(恒松祐里/葵わかな/柴田杏花/山口まゆ)のひとり、葵わかなちゃんがとっても良いんだ。大事なことだから三回言いました←
『くちびるに~』では、真面目なメガネキャラで、それも似合ってたんだけれど、今回は一転して、ちとスレた感じの強気の子を演じている。でも、根は素直な良い子で…って、もうその演技が完璧なんだ。
スマホに噛り付いてるような現代っ子が「サバイバル」をするって、それ自体はコメディ要素なのだけれど…現代っ子の彼女はいちばん文明を引きずっているから、鑑賞者との心的な距離が近い。感覚的に、あの子の目を通してこの映画を見るような感じになる(少なくともぼくは)。一見、スレた感じのこの子の視点から見るからこそ、周りの家族の成長とか絆が染みてくる。
それに、この子の存在がなんというかな…明るさというか暖かさというかな…そんなものを映画に与えていて、だからこそ切ない場面が逆に染みてくるわけで…とても良いんだ。可愛いんだ、これがまた!←
中盤のギスギスを除けば、ほとんどパーフェクトな映画。(矢口さん自体はもともと脚本を兼ねる人だけれど)東宝作品では、昨年あたりから監督が脚本を兼ねるケースが増えていて、ぼくは「東宝メソッド」と呼んでいる。その効果はここでも出ていると思う。単純に作品としての質が高いよね。拍手。
☆☆☆☆★(4.5)