「逃げ恥」徒然1(シチュエーション駆動型)
『逃げ恥』を見ました。なんなら漫画も読んだです。
脚本家さん(野木亜紀子)のこれまでの仕事を見ても、『俺物語!!』『アイアムアヒーロー』など、2次元作品の実写化を多く手がけているようで。このドラマも、ちゃんと2次元文化の文脈を踏まえて作られていた気がします(その辺の実写化作品は僕も評価していた作品ですし)
もちろん、もともとが漫画なので、二次元っぽいのは当たり前なんですが。
『イタズラなKiss』に代表されるように、シチュエーション駆動型のラブストーリーってありますよね。何らかの事情で止むを得ず同居(など)をする羽目になって、否応なくお互いの距離が縮まっていくっていう。
(あれ、少女漫画的な主題なのかな…もとを辿ると、シータとかラムとか「空から降ってくる少女」に行き当たりそうですが)
2000年代に入り台頭してきた「部室もの」もまた、シチュエーション駆動型です。『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団、『僕は友達が少ない』(はがない)の隣人部、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(俺ガイル)の奉仕部など。あれらも部室で一緒に過ごすことで距離が縮まっていきます。
いつからか「草食系男子」なんて言葉がありますが、だからと言って必ずしも女性すべてが肉食になるわけでもない。「おひとりさま」なんて言葉もありますよね。その一方ではもちろん、恋愛している人もいて、恋愛に関して二極化が進んでいる…あまりに雑な切り方ですけどね。
そういう状況の中で、こうした「部室もの」が台頭してくる。
それは要は、恋愛経験に乏しかったり、人とのコミュニケーションが苦手な人でも、あるいはたとえ相手が高嶺の花でも、「同じ部屋に入れちゃえば、仲良くなるんじゃね?」ってことですよ(笑)。ただ、部室ってのは、同居よりは親密性が一段下がるので、こうした作品では、互いの関係も友情と恋愛の間をただよう傾向があります。
シチュエーション駆動型の最新版が、『君の名は。』でしょう。あれは同じ空間にいるわけではないですが、なんだかよく分からない力によって三葉と瀧くんが結び付いてしまう。そうして生じたシチュエーションによって、必然的に相手のことを考えなければならない…という点において、あれもシチュエーション駆動型です。
『逃げ恥』もまたシチュエーション駆動型です。お互いが好きってわけでも(最初は)ないのに、まず同居ってシチュエーションが最初にある。ただ、僕が面白いと思うのは、あれが「自覚的」だということ。
シチュエーション駆動型にありがちなパターンでは、構図から願望が透けて見えてしまうというか…つまり、「周りの状況で仕方なく…」ってなってるけれど、潜在的には主人公はそういうことを望んでいるわけでしょ? 作者もそういうことを描きたいわけだし、読者も見たいわけでしょ? っていう。ただ、その部分は表向き隠されている。やがてはそういう自分の気持ちに主人公が気付いたりもするわけですが。
『はがない』の夜空なんかは割りと自覚的かな…隣人部を作ったのは夜空ですし。ただ、主人公である小鷹の視点からすると、やはり「無理やり入部させられる」ということになります。
ハルヒなんかも自覚的です。SOS団を作ったのはハルヒですし、閉鎖空間にキョンと二人で閉じこもっちゃうのも、ハルヒの願望が現れています。そもそもあの世界、ハルヒの思い通りにしかならんですし。主人公の潜在的な願望を可視化してしまったのが『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品です。
ただ、あれも一方では相方キョンの方の気持ちが隠されていて。振り回されるまま、嫌々みたいな顔をしてハルヒと一緒に居る。「だけど、お前、本当はそれどう思ってるんだ?」、そういう問いかけが直球でなされるのが、『涼宮ハルヒの消失』でした。だからこそ、あれは最高傑作なわけですが。
『逃げ恥』の場合、お手伝いさんとして働くのは親が勝手に決めちゃったことですが、そこから先はかなり自覚的に進んでいきます。住み込みの契約結婚もみくりが提案して二人で決めたことですよね。「恋人」になるってのもそうですし。
感情ありきではないところが、このドラマがシチュエーション駆動型である所以ですが、そのシチュエーションを自ら理詰めで作っていくところが、この物語の面白いところです。理屈とシチュエーションが先にあって、感情は後からついてくる。
もうひとつ、これが「自覚的」だってのは、かなり客観的に分析しますよね。同居というシチュエーションで駆動されることで、やがては感情の問題も出てくるわけですが、単にその感情に流されるのでなく、このシチュエーションにおけるファクターのひとつとして位置付けて分析していく。
なんていうか…これがシチュエーション駆動型…シチュエーションありきだってことを、(作者はもちろん)お互いが自覚して物語が進んでいく印象があるんです。そういうある種のクレバーさが心地よかったですね…( ..)φ
つづく(次回はドラマと漫画の違いについて)