「遅れてやってくること」
欅坂46の新曲『世界には愛しかない』、初見の印象はいまいちでした。曲冒頭、遅れてやってくる平手友梨奈。セリフからはじまる曲。相変わらずドラマチックな感じですが、どうも奇をてらい過ぎているなと。パフォーマンスも粗削りな未熟さが前面に出ていて、どことなく学生演劇みたい。
しかしながら、ヘッドフォンをしながら何度か繰り返し見ている内に、これはこれで中々良いのじゃないかと思い直しました。音が繊細でキラキラしているので、ヘッドフォンをした方が遥かに印象が良い。
たしかに『サイレントマジョリティー』に比べると初見のインパクトは弱いですが、見ている内に評価が上がってくる曲だと思います。衝撃が遅れてやってくるのですね。まさに平手ちゃんのように。
そして、この「遅れてやってくる」ことこそが、この曲の鍵を握っているように思います。歌詞も振付と同時ではありません。序盤の「思いっきり手をのばした」という台詞に対して、振付では、次の歌詞の箇所で手を伸ばします(追記:さらに、他のメンバーがグッと手を伸ばした後に一瞬遅れて、平手ちゃんがスッと上に手を翳していく)
その直後の歌詞、「この胸に溢れる君への想い」では、同時に胸に手を当てる振付になっていますが、この振付自体が前曲『サイレントマジョリティ』を彷彿とさせるものになっています。『サイレントマジョリティ』から見ると、この振付も遅れてやってくるのです。
そして、この曲の振付でもっとも印象的な場面が訪れます。それは、台詞を読みながらメンバーの前を横切り、一瞬停止してこぶしを掲げる長濱ねるのあとに、一瞬遅れて後ろのメンバーたちがこぶしを掲げる場面です。
これは光景として非常に美しいです。横に揺動しつつ縦にスッとスッと入っていく動きが目に焼き付きます。
ただその分、非常にタイミングがシビアなようで、日テレの「THE MUSIC DAY」ではいまいちに感じました(あの番組はカメラワークも良くなかった)
それはともかく…
これらの「遅れてやってくる」ことが生み出す効果は、おそらくある種の、(藤田貴大さんの舞台のような)リフレインの効果です。それが、まるで山びこのように、時間と空間に広がっていく「響き」の印象を与えています。
この時間と空間に広がっていく響きの印象が、学生演劇のような「青さ」と結びつくとき、そこには「青空」が生まれます。繊細でキラキラした音が、そこに青春の煌めきを加えています。