オデッセイ
THE MARTIAN
2015年アメリカ、142分
監督:リドリー・スコット
主演:マット・デイモン
概要
『グラディエーター』などのリドリー・スコットがメガホンを取り、『ボーン』シリーズなどのマット・デイモンが火星に取り残された宇宙飛行士を演じるSFアドベンチャー。火星で死亡したと思われた宇宙飛行士が実は生きていることが発覚、主人公の必死のサバイバルと彼を助けようとするNASAや乗組員たちの奮闘が描かれる。共演は、『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステインや『LIFE!/ライフ』などのクリステン・ウィグなど。スコット監督による壮大なビジュアルや感動的なストーリーに注目。(シネマトゥデイより)
感想
古くはH・G・ウェルズ『宇宙戦争』から、近年の『テラフォーマーズ』に至るまで、「火星人」は数々のインスピレーションの源になってきた。「火星人」という言葉には、なにか特別な響きがある。そしてそれは、そうしたタイトルに現れるような敵性的な存在としてだけではない。火星にポエジーを見出したのは、レイ・ブラッドベリ『火星年代記』(The Martian Chronicles)だった。
この作品…『オデッセイ』と言うと、いまいちピンと来ないけれど(古代を連想させるところはリドリー・スコット的ではあるけれども)、原題はTHE MARTIAN、まんま「火星人」だ。この響きをこの映画の中に感じ取らなければ、話は始まらない。この映画は、もっともあり得そうな形で、「火星人」を描いた作品だ。
生き物一匹いない火星で、科学の力を武器にお気楽に乗り越えていく主人公。なにか特別なことをするわけではなく、やるべきことをやる。懐メロを流しながら、淡々と作業を進める様は、まるで地球の生活空間の延長線上にいるかのようだ。
その場がどこであろうが…未知の大陸であろうが、火星であろうが・・・知恵と勇気でなんとかなるという自信。ここには開拓者時代のサバイバル精神と、『インターステラー』にも現れていた科学に対する信奉が現れている。まるで迷いがない。僕がアメリカという国に敵わないと思うのは、こういうところ。僕らが文学的に逡巡している間に、彼らはどんどん先に行ってしまう。
この映画自体は完全なシミュレーションになっているわけでもなく、演出上/物語上の都合もあってか、展開的に、やや「ん?」と思えるところもある(特にクライマックスのところ)。都合よく話が進み過ぎというかね。
ただ、その辺はコメディ要素と演出でごまけている。前半はリズムとノリ、後半はドラマ性で押し切っている感じ。音楽とストーリーがリンクしていたり、フライトディレクター役のショーン・ビーン(=LOTRのボロミア)がLOTRの小ネタをかましてくれる辺りも、洒落が効いていて良い(原作にもあるネタらしいから、それでキャスティングしたのかも)
それだけじゃない。物語中盤の「旅路」のシーンに(ブラッドベリのような)ポエジーを感じた。荒涼とした赤土の大地に延々と続いていく轍。ああいう映像を撮ってくれるだけで、僕は満足だ。さらに、パスファインダーを出してくる辺りも小憎らしい。60年代を生きた人々にとって、「月」と言ったらアポロだったように、90年代を生きた僕らにとっては、「火星」と言ったらパスファインダーだ←力説
リドリー・スコットらしく賛否が分かれる映画かも知れない。けれど、「火星人」とか「パスファインダー」という言葉に特別な響きを感じ取る人にとっては、特別な意味を持つ映画だ。
☆☆☆☆☆(5.0)
物語4.5
配役4.5
演出4.5
映像5.0
音楽4.5