人生の約束
2016年日本、120分
監督:石橋冠
主演:竹野内豊
概要
富山県射水市で江戸時代から続く「新湊曳山まつり」を題材に、テレビドラマ「池中玄太」シリーズなどの石橋冠が映画初監督を果たしたドラマ。仕事一筋で会社を大きくすることだけに尽力してきた男が親友の故郷・富山県新湊を訪れ、親友が死の直前まで参加を切望していた新湊曳山まつりに関わり、住民たちと触れ合ううちに再生していくさまを描く。主演は竹野内豊、共演には江口洋介、西田敏行、ビートたけしら豪華キャストが集結。(シネマトゥデイより)
感想
日本の映画やTVドラマにありがちな、どこか「文学的」な薫りがする映画。その物語自体もまた、ありがちなもの。都会の仕事人間が、過疎化した町で自分を再発見します的な? 死んだ友人の想いを受け継ぎます的な? でも実際のところ、その町の本質的な問題は何も解決されてません的な? そりゃあ、お客さんも入りませんわな。
この監督さんはTVドラマ畑の人らしく、wikiによると次のように発言している。
映像がファッション化し、本来描くべき人間たちの生活とか心情が遠くなってしまったように思われる。テレビドラマの使命は、日常の生活にしっかり寄り添い、そこに生きる人の心情や、他者との絆を丹念に描いて<人生への応援歌>であるべき。その特質が衰退していく気配は、個人的には淋しい
まあ、それは分かるのだけれど、お金を払って観に行かなければならない映画は、TVをつければ勝手に流れてくるTVドラマとは違う。映画の作り手は、そもそも見に来てもらわなきゃお話にならないわけで。あの広い劇場の中、ひとりで居た僕はそんなことを考えていた。
ただ、この作品、撮影は本当に素晴らしい。雨に煙る路面、薄闇に浮き上がる漁船の灯火。なにか特別なことをしているわけじゃないし、パッと見で惹きつけられる何かがあるわけじゃないけれど、ひとつひとつのフレームの収まり方や光の加減が完璧なんだ。こういう映像は見ていて心地がよい。
調べてみたところ、撮影でクレジットされている山下悟さんもやはりTVドラマ畑の人で、この監督さんとよくコンビを組んでいる。正直、TVドラマの映像には関心しないことも多いのだけれど、この撮影には素直におみそれした。見どころとなる曳山祭のシーンも美しい。
それからもうひとつ、オールキャストではあっても、とかくむさ苦しくなりそうな俳優陣の中で(失敬)、新人の高橋ひかるちゃんが、さわやかな風を吹かせている。物語的にも、彼女のストーリーはやや別立ての感があるのだけれど、それが功を奏し、清冷な存在感を放っている。
まあ、少し引っかかるところはある。「おっさんと少女」というのは、ある意味で古典的な組み合わせではあるのだけれど(cf.『レオン』)、この映画は少女の仄かな恋心をあまりに理想化して描きすぎていて、微妙にウソが感じられる。脚本か監督に女性が入っていたら、こういう感じにはならないだろうなって。
追記
こんな記事を見かけた。
演出経験55年のキャリアを誇る78歳の大ベテランは、「映画を撮りたいという強い衝動に駆られました。かねて1本だけ映画を撮りたいという夢を持っていましたが、傲慢にもその場合は自分が発想した物語を、自分が愛する風景の中で撮らなければならないと、頑なに思い込んでいました」と心情を告白。さらに、「いまやっと、自信を持って撮れる素材につきあたったのが、この衝動になりました。・・・」
なんか、これを見て、ああそういう感じだな~って。(実際の脚本は別の人だけれど)正直、物語的には拙いし、ツッコミどころもたくさんある。でも、そんな不器用さが逆に良いのかも知れない。たとえば、これまで絵画なんて描いたことのないお爺さんが、拙いながらもこれまでの想いをすべて込めて描いたような、そしてそのお爺さんを愛する人たちがこぞってモデルになってくれたような、そんな映画。
☆☆☆☆(4.0)
物語2.5
配役4.5
演出3.5
映像5.0
音楽4.0