『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』
THE PEANUTS MOVIE
2015年アメリカ、88分
監督:スティーヴ・マーティノ
概要
世界中で親しまれているチャールズ・シュルツによる名作コミックの劇場版。スヌーピーやチャーリー・ブラウン、その仲間たちが繰り広げる愉快な日常が描かれる。製作は『アイス・エイジ』シリーズなどで知られるブルー・スカイ・スタジオ、監督は『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』などのスティーヴ・マーティノが務め、『アナと雪の女王』などのクリストフ・ベックが音楽を担当。CGでリアルに再現されたスヌーピーの毛並みのモフモフ感にも注目。(シネマトウデイより)
感想
幕が開いた瞬間に気付く。「ああ、これは素晴らしい」と。とにかくね、3DCGが柔らかいんだ。3Dなんだけれど、どこか漫画的な味わいがある。
3DCGって、どこか硬い印象があって、それをどうするかってのは常に問題だ。それはフォトリアルなCGであっても、セルルックのCGであっても変わらない。だからこそ、『トイ・ストーリー』ではオモチャ(もともと硬いもの)が主題になったわけだし、最近でも『リトル・プリンス』では、部分的に人形アニメーションが用いられていた。
この『スヌーピー』では、それがどう回避されていたか。まず、毛並みのシミュレーションが素晴らしい。毛並みによって表面の硬さは回避されるし、全体の印象も柔らかくなる。エンドロールで見た限り、それ専用のスタッフがいるのかな。もうその辺の手のかけ方からして、どこぞの3DCGアニメとは違うわけさ。
そしてもうひとつ重要なもの、それはたぶん、「上書き」だと思う。本作の監督はこんなことを言っている。
CGなので原作とは異なり、ライティングやテクスチャ、奥行きが表現されていますが、チャーリー・ブラウンやスヌーピー、仲間たちを描く本質はペンタッチにある。それを忘れずに制作したと、作品から感じ取っていただけると思います。
おそらく、まずモデリングされたキャラクターがあって、そこに目や口などの表情を描きこんでいるんじゃなかろうか。この表情が素晴らしい。何よりの見どころはこの表情かも知れない。線で描かれた豊かな表情は、硬さのある3DCGに柔らかさを与え、キャラクターに活気を与えている。
陰影に関しても、シミュレートされた照明効果に漫画的な陰影を付け加えているし、雲やら木々やら山並みやら背景の事物に関しても、なんらかの線を付け加えていると思う。漫画的な効果線も描かれているのだけれど、それも違和感なく3D世界に溶け込んでいる。
3Dのオブジェクトにも、人が描いた暖かみを感じさせる線の歪みが取り入れられている。フォトリアルな3DCGが実写映画を参照し、セルルックの3DCGがアニメを参照しているのに対し、これはおそらく漫画を参照している。あるいは、第三の道と言っても良いのかもしれない。
3DCGなのに線で魅せることが出来るなんて、凄い発見だと思う。そんなこと、誰も気づきやしなかった。だって、3D全盛の時代に線の魅力を訴えるためにジブリが作ったのが、『ポニョ』だったり、『かぐや姫』だったりしたわけだからね。それに対して、この映画は3Dを用いつつ、線の魅力を活かすことが出来るってことを証明してしまったんだ。
映像として統一感がある思うし、数々の邦画3Dアニメの惨状(①②③④)を思うにつけ、こういう映像感覚を持っているってことがうらやましくもある。とても手間がかかっているけれど、こういうところに手間をかけられる環境ってのもうらやましい。
ストーリー的には、とてもシンプルなストーリーだけれど骨格がしっかりしている。そこに、おまけのように添えられたスヌーピーの空想シーンも面白い。第一次大戦期の空中戦をモチーフにした、遊び心満載で、かつマニアックなシーンだ。その辺り、『リトル・プリンス』よりも、よほどサン=テグジュペリっぽい雰囲気を感じた。
「退屈」というレビューもちらほら見かけたけれど、少なくとも僕は、こういう映像だったらずっと見ていられる。 ひとつだけ、日本語版のエンディング・ソングは蛇足。この映画で余計なものはそれだけだな。
追記
この映画のアートブックを買ってしまった(* ̄艸 ̄)
それによると、「表情線とも呼ばれる目のツルに関しては、キャラクターの肌と一体化させる必要があった。そのために、リギング部門とマテリアル部門は”ポーズ作製が可能な”テクスチャ―つまり目のツル―を作り、アニメーターたちがコントロールできるようにした」(p.38)らしい( ..)φ
☆☆☆☆☆(5.0)
物語4.0
配役-
演出5.0
映像5.0
音楽4.0