ハーモニー
監督:なかむらたかし、マイケル・アリアス
2015年日本、120分
概要
『寫眞館』などのなかむらたかしと『鉄コン筋クリート』などのマイケル・アリアスが監督を務め、34歳で亡くなった伊藤計劃のSF小説を映画化した劇場版アニメーション。カオスのような世の中から高度な医療社会に切り替わった地球を舞台に、抵抗を試みた少女たちの戦いを活写する。『ベルセルク 黄金時代篇』シリーズなどを手掛けたSTUDIO4°Cがアニメーション制作を担当。生きている実感を持てない作り物の世界を震撼(しんかん)させる、魂の絶叫に衝撃を受ける。(シネマトゥデイより)
感想
ニセモノが世界に蔓延する。
まず、3DCGの問題から行こうか。不必要なカメラワーク、アングルが目立つ。むしろ逆に3Dで作られていることを強く意識してしまう。表現したいものがあって、それに対して技術を用いているのではなく、技術ありきになってしまっている。本末転倒。
それに、その技術もさほど優れていない。風にはためく無数の布地。印象的な場面だけれど、そこにちゃんと風の存在を感じられない。それぞれがバラバラにシミュレートされているように感じられる。それから、ガラスにつく水滴が世界観と調和していない。これはむしろ世界観設定の方がミスであって、のちに述べるように、こうした水滴表現がなじむくらいの世界観にしなければならなかったのだと思う。
演出に関しても言いたいことはたくさんある。語りは『パトレイバー2』を連想させるけれど、ただ榊原良子を使えばいいってもんじゃない。間ってのは退屈させるためにあるもんじゃない。
けれど、何よりの問題はキャラクターデザインにある。原作を書いた伊藤計劃は、「死の香り」「血の匂い」が特徴的な作家だった。李賀という詩人がいるけれど、あの感じに近い。だから、アニメ化する際も、そうした匂いがいかに立ち現れてくるかが勝負だったと思う。その点で、この映画は完全に失敗している。
かつて、押井守はテロをテーマにした『パトレイバー2』を制作する際、その世界観に合わせてキャラクターデザインを決めた。TVシリーズとは打って変わって、顔の輪郭のゴツゴツした、目の小さいデザインにしたんだ。それはたしかに、「可愛くない」と不評だったけれど、でもそこにはちゃんと意図があった。
キャラクターがアニメアニメしていると、完全に嘘の世界になってしまうから、血が流れてもリアリティを感じられない。綺麗な無菌世界における「血」という生々しい異物を表現しきれない。この映画のキャラはアニメアニメし過ぎているし、とくにインターポールのエリヤ・ヴァシロフのデザインは最悪。ルパン三世に出てきそうなデザインで、完全に世界観をはき違えている。
これはまた、建築デザインの問題にも通じている。どこかで見たような、生物を意識した建物のデザインは、ある種SFチックで、現実に存在する感じがしない。世界そのものが作られたウソの世界に見えてしまう。この映画に必要なのは、いわばハーフリアリティだったのだとボクは思う。いくらフィクションであっても、こういう世界がまさにあるのだ、と信じさせることが第一歩だったのに、その一歩に失敗している。
もうひとつ、キャラクターに関しては、目の問題もある。主要キャラはアニメ的な大きい目なのに、モブキャラは目が小さい。主要キャラとモブキャラとが描き分けられていることによって、この映画で描かれている問題が、主要キャラだけの小さな問題に見えてしまう。モブキャラたちのことは、本当はどうでも良いんでしょ…という感じ。それは制作者の意図でもあるのだろうけれど、そのことによって世界全部がシュリンクしてしまっているのは問題。
とは言え、それは原作そのものが抱えていた問題でもあって、僕はこのブログで原作を結構ボロカスに言ってたりもする*。ただ、原作はそう感じさせないのに、この映画は、原作をエヴァの「人類補完計画」の亜流にしてしまった。なんで、何でもかんでも「アニメ」にしてしまうのだ。
☆☆☆(3.0)
物語4.0
配役4.0
演出2.5
映像2.5
音楽4.0