劇場版 弱虫ペダル
2015年日本、90分。
総監督:鍋島修、監督:長沼範裕
概要
自転車ロードレースに青春をささげる高校生たちの戦いと友情を描いた渡辺航による人気コミックを、原作者自ら書き下ろしたオリジナルストーリーで映画化。インターハイを勝ち抜いた総北高校自転車競技部のメンバーが、全国の強豪チームが参戦する熊本・阿蘇でのレースに向けて熱いドラマを繰り広げる。炎のクライマーと称される新キャラクターも登場する、現メンバーのチーム総北にとっての最後のレースの行方に注目。(シネマトゥデイより)
感想
今回の舞台は熊本。
『けいおん!』がイギリスへ、『ラブライブ!』がニューヨークへ行ったのと同様、映画という特別感を演出し、なおかつスタッフへのご褒美のため、いつもより少しだけ遠い場所が舞台に選ばれる。今作ではそれが「熊本」ってところが微笑ましくもあるのだけれど。
冒頭、例の「ヒ~メヒメ♪」が流れる。これぞ『弱虫ペダル』って感じで、流れる絵の背景も心地良いのに、なぜだかすぐにOPテーマに切り替えてしまう。まるでOPとEDに曲を流さなきゃいけないって決まりでもあるかのように。
この映画はそのように、なかなか良い場面が連続していかない。色んな要素が介在していて、首尾一貫した論理で作られているように見えないんだ。
吉田玲子さんだから、脚本自体はもちろんしっかりしている。オリジナルストーリーでも、原作のツボやキャラクターの人間関係、ファンの見たいものをちゃんと押さえてある。ただ、物語上の要請によって、明らかに不可解になっているところもある(「5人で走ります」って、そりゃあおかしいだろうと)。
それは、もともとの原作が抱えている問題とも通じている。レースのルールがおかしいんだよね。まるで、スプリント、クライム、ゴールと3つの別々のレースを戦っているみたいに見えるし、道中の描写なんてまるでタイムトライアルだ。
これはもちろん、いろんなキャラクターに花をもたすために意図的にやっていることで、だからここでも、作品が物語上(というか創作上)の要請に従っているんだ。そして、それが嘘っぽさを生んでいる。レースそれ自体の論理で動いているように見えない。
スプリンターがなんで道中でアタックかけるんだと。その上、後ろにいようが何処にいようが、結局「うぉー!」ってだけで、何とかなってしまう。戦略もクソもなにもない。ロードレースの旨味がまるでないんだ(だからこそ、すぐネタ切れになってマンネリ化してしまう)。
はっきり言ってこれ、そういう意味じゃロードレースである必然性は全然ないんだよね。たまたま題材にしたのがロードレースってだけで、こういう風にやるなら、別に陸上でもカーレースでも何でも構わないわけ(『キャプ翼』と一緒)。
そういうところが気になり出すと『弱虫ペダル』は楽しめない。
だから、この作品の肝は、そういうところにはなくて、むしろ風を切る心地よさとか、仰ぎ見る空の青さとか、山を登り切ったあとの清々しさとか、そういうところにこそあるんだろう。
そういう点では、この映画には良い場面がいくつもある。背景も美しいし、なによりレイアウトが素晴らしい。カメラを引き気味にして撮る画には、いくども痺れた。
ただ、良い場面が連続していかない。そこがもったいない。
☆☆☆☆(4.0)
物語☆☆☆★
配役☆☆☆★
演出☆☆☆
映像☆☆☆☆★
音楽☆☆☆★