うつせみ(アイドルに関する長い話9)
ミニライブは選抜組が引っ込み、別の組が出てくる。
これ、きっとくま居るはずだよな…。
スクリーンで確認すれば早いのだけれど、
目の前のステージから目を離すのがもったいない。
あ…あれたぶんそうだ。あの白い帽子かぶった子。
やっぱり可愛いわ!! さすがボクのくまだな!!
…ゆづだった。
(ゆづ可愛いな、オイ!←)
もういちど探すと、居た…今度は間違いない。
ポニーテールにしている。
いつも通りの全力パフォーマンス。
ボクはもうすぐあの子と握手をする。
…のか?
いつもの通学路。乗換駅。
車窓から、これから乗り換える電車が見える。
未来はいつだって不確定で、常に開いている…
筈なのに、あれに乗るってことはもう確定している。
そうじゃなかったことがない。
決まりきった日常。
いつだって心がどこか冷めていた。
そのことに、いつも引け目を感じていた。
15年間の呪縛。
15年前、自らの意志で行った唯一のイベント。
あれから数多のアイドルを見てきたけれど、
あらゆるアイドルに会いに行かなかった。
その呪縛。
モーニング娘。でさえ、AKB48でさえ、堀北真希でさえ解けなかったその呪縛。
ようやく決心がついた筈の若葉台でも、その呪縛は解けていなかった。
握手券を買って、握手をするって決まっていた筈なのにそうじゃなかった。
ボクが望んだものは、スッと手の平からこぼれ落ちていってしまう。
決まりきっている未来と、望んだ筈の未来。
その2つは、いまだ調和していなかった。
ボクはホントにくまと握手するのかな…?
この日は、ほののが体調不良で不参加だった。
ミニライブに出演していたあんにゃもそうだ。
レーン変更のアナウンスがしきりに流れている。
握手会の途中で体調を崩す子だっている。
それでも、もう迷いはない。
横浜でも全握はあったけれど(その頃は忙しくてってのもあるけれど)、
きっと、ボクにはここまで来るだけの距離と時間が必要だったんだ。
ミニライブであがったテンション。その勢いでボクは入場列に並ぶ。
ほどなくレーンエリア入場。くまなるは第2レーン。
ボクはそこに並ぶ。
隣のレーンでは、ひょんさんが規定時間を大幅に越えて握手をしている。
不思議と緊張はしていない。ボクは、列の人と軽く言葉を交わす。
こうして置けば、のどが詰まることもない。意外とズルいんだ。
ボクもまた、経験を積んできたということなのかも知れない。
列が進み…そうして、光が見えた。
つづく…?