バケモノの子
The Boy and The Beast
2015年日本119分
監督:細田守
主演:役所広司/宮崎あおい
概要
『サマーウォーズ』などの細田守が監督を務め、人間界とバケモノ界が存在するパラレルワールドを舞台に孤独な少年とバケモノの交流を描くアニメーション。人間界「渋谷」で一人ぼっちの少年と、バケモノ界「渋天街」で孤独なバケモノ。本来出会うはずのない彼らが繰り広げる修行と冒険を映す。バケモノと少年の声を役所広司と宮崎あおいが担当するほか、染谷将太や広瀬すずら人気俳優が声優として名を連ねる。不幸な少年が身勝手なバケモノとの出会いにより成長し、絆を深めていく感動的な物語に期待。(シネマトゥデイより)
感想
この映画は何に似ているだろう?
ボクはそう考えてしまう。ここ最近の日テレによる猛プッシュぶりは、彼らが、次の宮崎作品として細田作品を見ていることを表していた。それによって、ムダにハードルが上がっているような気もする。
もちろん、細田さんは、『デジモン』から『ワンピース』から『時をかける少女』から『サマーウォーズ』から『おおかみこどもの雨と雪』まで、一貫して実績を残してきた監督さんで、すでに自分の作風を確立している筈だし、いまさら、どうこう言うこともない…筈なのだけれど。
でも、そんな考えが頭をもたげてしまう。それは、一にも二にも、世界観の問題なんだと思う。世界観が何か似ている…と言うよりも、これはどういう世界なんだ…ということが、イマイチ分かり辛い。
あのバケモノ界(渋天街)は、一見、中央アジア風なんだけれど、別にそれで統一されているというわけでもない。時にはもっと東洋的だし、時にはもっと地中海的だ。どういう文化で成り立っているのか、人々は何を思って暮らしているのか、どういう気候なのか、どれくらいの広さの世界なのか…ということが分からない。
美術に男鹿さんが入ってるくらいだから、もちろん植生に関しては考えているんだろうけれど、それでもまだ、釈然としない感じが残る。本当にそこにその木は生えるの? 本当にそこはそんなに蝉の声が聞こえるの? 本当にそこに雪は降るの?
思えば、細田作品って、原作ものの『ワンピース』をのぞけば、すべて現代日本が主な舞台になっていた。写真トレスの手法も早くから取り入れていたし、『デジモン』では制作スタジオに近いからって、光が丘団地を舞台にしていたりする。それが、細田作品のリアリティを支えていた。
今回の作品で描かれるバケモノ界には、それが通じない(もちろん渋谷の描写には通じるわけだけれど)。中央アジアに取材に行くことは出来ても、やはり身近なものに感じるリアリティとは違う。地に足が付いていない。浮き上がっているように感じられる。
そして、そうした現実から離れた時、その世界を自分の想像力によって構成していく能力が、おそらく細田さんには欠けている(…ということに、この映画で気づかされた)。
たとえば、『ドラゴンボール』は(中国ベースとは言え)まるで無国籍な世界観になっているけれど、それでもああいう世界があるって納得できる。ちゃんとリアリティがある。
この映画のバケモノ界は、その点どこかチグハグで、継ぎ接ぎされたような印象が最後までぬぐえなかった。そこにちゃんと人(バケモノ)が生きている感じがしない。そう…この映画はなにより『星を追う子ども』に似ているんだ(自分自身の問題としてケリをつけてしまう辺りもね)。
そして、その「継ぎ接ぎ」感は、ストーリーにおいても現れている。なぜ、『白鯨』? なぜ、闇? そういうことはたくさんあって。結果として、物語それ自体のものとしても、キャラクターのものとしても、「動機」(あるいは必然性)が弱く感じられる。
アニメーションとしては優れているし、心を打つような場面もある。でも、これは「本物」じゃない。(本職を使わない)声も含めてね。
☆☆☆☆(4.0)
物語☆☆☆★
配役☆☆☆★
演出☆☆☆☆
映像☆☆☆☆
音楽☆☆☆★