冴えカノ徒然3 | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


「冴えカノ徒然3」

 冴えカノ監督の亀井さんの過去作を見てみようって話。

『テイルズ オブ ヴェスペリア』2009年劇場(Production I.G)

 処女監督作となったこの作品。

 すぐに気付くのは、ゲーム原作かつファンタジー史劇(そんなジャンルあるのか知らんけれど)ということもあってか、カメラワークが非常に抑制的だということ。安定した構図が多いし、クローズアップも少ない。この辺は『冴えカノ』とは対照的。引きの絵が多いから、心理描写というよりも事実を淡々と書き連ねているという気がする。

 作監に黄瀬さんが入っているし、脚本も吉田玲子さんだから、作品としての出来が悪いわけはない。これ単独ですごく引かれる何かがあるわけじゃないけれど、これはこれで良いのかなと。


『うさぎドロップ』
2011年TV(Production I.G.)

 ノイタミナで放送されたテレビシリーズ。絵本的な処理がなされたアバン(OP前)と、些細な日常が描かれたCパート(ED後)が印象的。

 とにかくメインスタッフがほとんど初経験だったらしく、手探り感がある。でも、それがアニメのお約束ごとと言うかな…そういうものからほんの少しだけ距離を置けていい結果を生んでいると思う。少しだけザラザラとした手触りなんだけれど、そこに温もりを感じるというかね。

 カメラワークも徐々に寄りが増えてきて、日常(事実)+心理描写という良いバランスになっていると思う。佳作。気付いたんだけれど、ボクは、『よつばと』とか『ばらかもん』とか(『パパのいうことを聞きなさい!』は…少し違うかな)、こういう系の作品がものすごく好きみたい。まあ、もともと『クレしん』好きだってのがそうだしね。

 ボクが『クレしん』でもっとも名場面だと思うのは、みさえがバイトする話。託児所に預けられたひまは、最初は気丈に振る舞うんだけれど、夕暮れになって窓の向こうをじっと眺めている。そうして、ふと部屋の後ろのドアからみさえが迎えに来たことに気づいて、振り返る。きょとんとした表情でみさえを眺めるひま…そしておもむろに泣き出す…ってあの場面ね。あれは好き…ってのは少し違うんだけれど、ああいうのに弱いなと。

 この『うさぎドロップ』は、なにかそんなことを思い起こさせた。

 余談:第何話目かで沖浦さんが原画に入っていてビックリした(正子が荒ぶれてプリン食べる場面らしい)。


『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』2013年TV(A-1 Pictures)

 これは、ハーレム系の構造もそうだし、ハイキーの絵作りとかハイテンポでところどころ抜きを作る演出とか寄りの多いカメラワークとか、亀井作品の中では、もっとも冴えカノに近い雰囲気を持った作品(同じ制作会社だし)。

 それと同時に、(『とらドラ』や『あの花』の)長井演出の影響が明らかに見られる。輪郭線に色線を用いるようなポップな絵作りとか、感情の高まりと共にグーッとテンションを盛り上げていくリズムとか、ああいうのは『冴えカノ』にも通じていく。

 ただ、正直、(ハーレム系アニメにはありがちだけれど)ヒロインたち、とくにメインヒロインの筈の真涼の心境を描き切れていないから、作品としては弱いと思う。その辺でいくと、たとえば(『とらドラ』はもちろん)同じ系列の作品でも、『中二病でも恋がしたい!』や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』などには一歩譲る。


『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』2014年TV(A-1 Pictures)

 これは一転してクラシックな絵作りの作品。輪郭線も太いし、幽霊+宝探しって主題も含めて、どこか90年代アニメのような雰囲気を纏っている。キャラも整理されていないし、正直これはいまいちだったな。

 で、『冴えカノ』と…。評価的には冴えカノ=うさぎドロップ>ヴェスペリア=俺修羅>七々々って感じかな。

 ひとつ特徴的だと思えたのはカメラワーク。作品を追うごとに段々とカメラが近くなっていくのもあるし、全体じゃなく部分で演技を見せるようになるんだよね。

 手とか足とかはもちろんそうだし、顔を映しているシーンでも目から下だけ映したり、逆に口は映さないで目から上だけ映したりね。(加藤が見切れているみたいに映る)例の喫茶店のシーンは、そうしたものの延長としても捉えられるのかなと。

 この人は長井演出をはじめとして他の演出家の影響を受けていると思うし、たとえば『うさぎドロップ』にしても『俺修羅』にしても、たぶん『冴えカノ』にしても、なにか新しい時代を築くような作品じゃないかも知れない。

 でも、真似るってのは学ぶってことで、それ自体は悪いことだとは思わないし、たとえば『よつばと』(はマンガだけれど)の横に『うさぎドロップ』があって、『中二病』の横に『俺修羅』があって…って、たとえ似たような作品でも、粗製乱造じゃなくて、ちゃんと質の高い作品がになっているというのがアニメの豊かさ/裾野の広さに結び付いているんだと思う。

 そして、それが、ありきたりなようでありきたりでないアニメ『冴えカノ』にも結び付いているのかなと( ..)φ

つづく