はるじおん2(アイドルに関する長い話8) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


「はるじおん」



 道すがら、マックを見つける。あとで時間を潰すのにちょうど良いかな…なんて思う。ちかごろ、評判の悪いマックだけれど、ボクはきっと、なにも言わないだろうな…。坂道の途中で、やけに足が重く感じる。家に帰りたい気持ちはいったいどこから来るんだろう。



 なにかがいつも遠くにあるような気がしていた。

 学校に行かなくなった頃、街を歩いていても、なにかに怯えていた。平日のこんな時間に歩いているなんて普通じゃない。だけど、ある時、隣街のCDショップに歩いていく途中で、ふと気付いた。「そうか、ボクは普通じゃないんだ」。

 そこでフッと気持ちが楽になり、そして、ボクは自由になった。あれからボクはずっと、自由であることの罪を背負い続けている。

 人と話すことが苦手だったわけじゃない。それはむしろ、ボクの天性だった。小学校の時も中学校の時も、授業そっちのけで隣の子と話していたから、通信簿にはいつも「おしゃべり」だって書かれていた。いま考えるとはた迷惑な話だ。

 だけど、自由であることの罪を背負ったボクには第二の天性が身に付いていった。あの頃、ボクは心に決めていたことがあった。自由であると言っても、無法者と一緒ということじゃない。プライドだけは妙に高くて、いつだって自分は特別だと思っていた。正しくあらねばならないし、そのために、ウソもつきたくない。

 だけど、自分のことをどう説明して良いか分からない。分かってもらえるとも思っていなかった。なぜ学校に行かなくなったか、自分でもよく分かっていなかった。単純な日常会話でも、 正直に答えようとすると、そんな深層心理まで話さざるを得なくなる。

 ある時、「どこの学校?」と聞かれたことがあった。ボクは適当に少し遠くの学校(底辺で知られていた)を答えた。すると「相模線って今でもボタン式?」と重ねられる。ボクは答えを知らなかった。だからまたウソを重ねた…。

 正直に話すことも出来ないし、かと言ってウソもつきたくない。こうして、ボクは無口になっていった。

 あの渋谷で、ボクはまたウソを重ねた。正しきものではなかった。いつだって、傍にはもうひとりの自分がいて、そいつがボクを責め立てた。自分は特別だという感覚と、正しきものではないという卑下は、なにか奇妙にねじくれたものを生んでいった。

 アイドルに傾斜していく一方で、ボクはあらゆるイベントに参加しなかった。イベント参加券を貰っても、それでも行かなかった。

 自分は特別だから、アイドルをあがめる多数の一部になりたくなかった。それに、闇を抱えた自分は、アイドルのような光り輝く存在に近づくべきではなかった。そう説明することはきっと、少し分かり易すぎるんだろう。

 月があることで、干潟の生き物たちは呼吸をすることが出来る。引き寄せられながら引き剥がされる。ボクは、なにかをずっと遠くに置いておきたかったんだ。

つづく