「アイドルとおでかけ」
去年、もっとも多くの名場面を生み出したのは(矢吹)奈子だったかも知れない。ちびっと話題になった「お化けを倒す軍隊だー!」もそうだけれど、『おでかけ』で見せた、美容器具を口にくわえピョコピョコ跳ねてはしゃぐ姿も、なにかジブリ・ヒロインみたいだった。
奈子を見ていると、アイドルの最大の武器はなにか…ってことを考えさせられる。もちろん、色々なことが考えられるだろうけれど、ボクにとってそれは、あらゆるものを新鮮に眺める力。奈子の見ている世界がいつも新鮮でキラキラしているから、奈子を見ているボクらの目にも、奈子を取り巻いている世界がキラキラして見える。
ボクにとって、アイドルとはそうして世界を輝かせる存在。
今年になって出てきている(と言うか、売り出しをかけられている)のが荒巻(美咲)ちゃん。おなじHKT3期でおなじ中学生で、でも奈子とは全く違うタイプ。荒巻ちゃんはつねに怯えた子犬のような目をしている。
奈子とはある意味では正反対なのだけれど、でも共通しているところがある。それは、どちらも「慣れ」の対極にあるということ。奈子がつねに世界を新鮮に眺めているのと同じように、荒巻ちゃんのあの怯えた目はどこか「はじめてのおつかい」を連想させる(慣れていたら怯えることもないからね)。
ああいう風に世界を新鮮なものとして眺められるのは、もちろん第一には年齢や経験の問題がある。まだ若く、芸能界に入ったばかりの彼女たちには、すべてのものが未知で、そして目新しいものに見える。それは当然のこと。
それでは、努力してこうしたまなざしが手に入るか…。ボクはないとは言わない。「子どものような絵を描きたい」と言ったピカソや、生まれてはじめて目を開けた時のことを想像して絵を描いたモネのようにね。もちろん、(いくつになっても子どもみたいに好奇心全開の)天性の子どもみたいな人だっている。
ただ、やっぱり若さゆえ未熟さゆえの力ってのはそれ自体としてあるから、(とくに『おでかけ』のような体験系の番組で)入ったばかりの子を積極的に使うってのはアリだと思う。中堅以上のメンバーはスキルを身に着けている筈だから、「自分で出てきて」っていうね。HKTはその辺がはっきりしている。
まあね…その一方で、ボク自身は悲しい目をした子にすごく惹かれてしまう…ってのは、さっしーを見ていて気付いたこと。この前、さっしーが昔は「毎日悲しかった」と言ったということが記事になっていたけれど、その時期ってのがまさに、ボクがさっしーにもっともハマっていた時期だった。
『おでかけ』でもうひとつ思ったのは、そんなさっしーの「風を読む力」と「それを伝える力」かな。出演メンバーが固定されていると感じれば、「色んなメンバー使ってください」とハッキリ言うし、またある時はこんなことがあった。
総選挙では11位にランクインし、先のシングルではAKB本体のWセンターに抜擢されるなど、進境著しい(宮脇)さくら。外仕事も増えて、『おでかけ』のような身内番組には出る機会も減っていた。
そんな時、たまたま近くで収録をしてたとかで、さくらが『おでかけ』のロケにふらっと現れたことがあった。その雰囲気がなんというか…別にイヤな感じというわけではなかったのだけれど、芸能人オーラ全開で、さっしーや後藤さんも驚いていた。
その時だったかな…その後だったかな…『おでかけ』にも選抜メンバーを積極的に呼ぶようにさっしーが働きかけたのは。ボクはそれは正しいと思った。それは「おでかけ」にとっても、さくら自身にとっても。
さくらは芸能人になってしまうには、まだ早い。さっしーは「アイドル」というものの力をよく分かっている。