「ボク的インターステラーの楽しみかた」その4
―重力場―
いつも言ったり書いたりしていることだが、まっとうなSF作家は科学的に不可能なことを作品から排除すべきだ。ただ、わたし自身もこの規則を絶対的なものと考えているわけではない。というのも、あまりにドラマティックな可能性を秘めていて、いくら不可能だとわかっていても、どうしても使いたくなってしまう装置というものが存在するからだ。
アイザック・アシモフ「時間旅行」『ゴールド』p.390.
(基本設定に関わるネタバレあり)
『インターステラー』では「時間の遅れ」がフューチャーされています。宇宙をテーマにしたSF作品では盛んに用いられる効果であり、庵野監督の『トップをねらえ!』を連想された方も多いようです。
ただ、『インターステラー』で用いられているのは、『トップをねらえ!』をはじめとした数多くの作品で用いられている、いわゆる「ウラシマ効果」とは、正確には少し違うもの↓
特殊相対性理論では、ある速度で動いている観測者の時計の進み方は、それより遅い速度か静止している観測者の時計よりも進み方が遅くなることが予言され、実験的に確認されている。一般相対性理論では、強い重力場にいる観測者は、それより弱い重力場にいる観測者よりも時計の進み方が遅い。(wiki)
『トップをねらえ』で用いられているものは、この前者の(特殊相対性理論で予言された)方。それに対して、『インターステラー』で用いられているのは、この後者の(一般相対性理論で予言された)方なんですよね。
このことからも分かるように、『インターステラー』では「重力場」というものがとても大きな役割を担っています。
(以下:結末に関わる重大なネタバレあり)
質量をもった物体があると、その周囲の時空は一種のゴム膜のようにゆがみが生じる。(wiki)
『インターステラー』では、たとえば、ある惑星上では、そこに1時間滞在するだけで、地球上では7年間進んでしまうことになっています。これは、近くにあるブラックホールの強大な重力場の影響だってことなんですよね。
さらにクライマックスでは、そのブラックホールでスイングバイを試みます。この時は(地球上に比べて)51年の遅れだったかな。その上、主人公自身はブラックホールそのものに飛び込んでいってしまうのです。
ここで疑問が生じます。そんな強大な重力場にあって、人間って大丈夫なんだろうか…。それをボクも疑問に思って、手持ちの本でちと調べてみたのです↓
地球の重力は高いところほど弱いので、もっとも地面に近いあなたの脚は頭よりも少し強く引かれる(中略)太陽と同じくらいの質量をもつブラックホールでは、この効果はたいへん強いので、宇宙飛行士はあっという間にスパゲッティ化されてしまうだろう。ただし、ブラックホールが大きければこのスパゲッティ化は起こりづらくなる。1万太陽質量のブラックホールなら、その表面に落ちてもぎりぎり命は取りとめるだろう。差し渡し10億キロメートルにもなる超重量級のブラックホールなら何の問題もない。
ポール・デイヴィス『タイムマシンをつくろう!』2003年(原書2001年)、p.85-86.
……問題ないみたいです(笑)
ホンマかいなって話ですが…この著者のポール・デイヴィスという方は、(マイケル・ファラデー賞などを受賞している)列記とした理論物理学者なので、一応、理論物理学上はそうなっていると考えても良いでしょう。
ただ、注意しておかなければならないのは、これはあくまでも理論物理学者が考える仮想的な身体だってことなんですよね。『インターステラー』の制作にも理論物理学者のキップ・ソーンが関わっていますから、そこで描かれているのも、やはり仮想的な身体(観測者の身体…あるいは映画的な身体と言っても良いかも知れないですが)なわけです。
そこには、医学的、あるいは心理学的な知見は加えられていない。まあ、当たり前ですけどね。誰もそこに実際に入っていった人はいないんですから。
だからそこは、ある意味ではウソをついている部分でもあるわけですが、それはSF上許容される範囲のウソだとボクは思います。それらはむしろ、ボクらに「実際はどうなんだろう?」ということを考えさせてくれるでしょう。
今回の「ボク的インターステラーの楽しみかた」は、そうして「実際はどうなんだろう?」と想像を巡らすこと、ですかね。