1.
20世紀末、アイドルを取り巻く状況は変化しようとしていました。TVのオーディション番組からモーニング娘が登場し、バラドルやグラドルに地位を奪われていた、歌って踊る王道アイドル復活の狼煙があげられたのです。
また、別のTV番組でオーディションされたチェキッ娘が登場してきたのも同じ頃でした。時代は、大人数アイドルの時代へと確実に進みつつありました。
しかしながら、ボクは当初、そのどちらにもハマることはありませんでした。むしろ、斜めに見ていたと言っても良いかも知れません。「なんだあのイモったいグループは…」とね。
彼女たちが出始めた1997年、あるいは1998年というのは、ボクはアイドルファンではなかったのです。
2.
なぜ彼女だったのか…それは、『千年王国III銃士ヴァニーナイツ』(1999)という深夜ドラマがきっかけだったのです。これがどういうドラマだったのか…というのは、wikiが手短に説明してくれます↓
美少女を主人公とした特撮作品の決定版として制作された作品。当時の深夜作品としては異例の20話という長期シリーズであり、視聴者の目をひきつけるために男性嗜好が考慮され、爽やかなお色気によるラブコメという演出が行われている。ただし男性嗜好とはいっても、女性が見ても嫌悪感を覚えることのないことが心がけられ、少女漫画の映像化がコンセプトとされている。(wiki)
前回の記事で書いたように、『しようよ』(1996)や『エコエコアザラク』(1997)など、若手女優を主役に配した深夜ドラマをよく見ていたボクは、この爽やかなお色気路線の深夜ドラマに見事に引っかかっちゃったわけですな(^_^;)>
さらに、このドラマにはもうひとつの仕掛けが施されていました↓
プロデューサーの1人である浅賀孝郎は、本作とほぼ同時期にアニメ『To Heart』のプロデュースも手がけているが、『To Heart』が「実写映像でできることをアニメで描く」という実験的なコンセプトがあったのに対して、本作では逆に「アニメやゲームの世界観を実写で描く」ということが念頭に置かれている。(wiki)
そう…この作品の世界観はどこかアニメっぽいんですよね。たとえば、高橋留美子作品以来、アニメでは典型的に見られる「ハーレム系」の構造が用いられていたりします↓
オタクなフリーター・藤田和幸の家に、ある日突然三人の少女が転がり込んできた。彼女らは千年前の英雄アレスト・ホルンに仕えるヴァニーナイツであり、和幸こそアレスト・ホルンの転生した姿なのであった。(wiki)
こうした「ハーレム系」の設定は、ゲームやアニメではよく見る設定ですけれど、実写でそれをやるというのが新鮮でした。
ボク自身、当時はそれほどアニメを見ていたわけではありませんし、「ときメモ」のような恋愛系ゲームをやったこともありませんでした。
もともと、アニメのキャラに感情移入するということが、ボクは(ゼロとは言いませんが)それほどないんですよね(だからこそ、アニヲタではなくドルヲタになったわけですが)。
それにもうひとつ重要なのは、「オタクなフリーター」という主人公のキャラ設定です。ボクがそれまで見ていたドラマの主人公は大人か、あるいは学校に行っている青年であって、ボク自身とは別の存在に感じられていたからです。
それに対して、このドラマは「こちら側」に寄せてきている。つまり、主人公キャラが対象とする視聴者のキャラと重ね合わされるような設定になっているんですよね。
そこにこそ、こういう設定を実写でやったことの意図があったでしょう。つまりこれは、ボクのような層を取り込むということを目指していました。ボクの視点から言うと、これはボク(のような人)のために作られたドラマであって、ボクはこのドラマをまさに自分自身のものと捉えたわけです。
(最近、久しぶりに見返してみたんですが)正直、演技なんて見られたもんじゃありません。作品として評価するのは難しいところがある。でも、自分自身のものと捉えているから、入り込めちゃうんですよね。あるいは、むしろ、そうした素人っぽさこそが、親近感を生むのかも知れません。
そうして、視聴者としてのボクは、作品の外から(作品として)見る感覚よりも、作品の内部に入って見る感覚が優位になっていきます。
そのようにして主人公と重ね合わされた視線は、視聴者であるボクに、登場人物の誰が「いちばん」か決めることを求めます。元気で明るいヒロイン。セクシーなお姉さんキャラ。クールでミステリアスな美少女。妹系など、様々な「タイプ」がいて、自分はその中で誰を選ぶのか…。
そしてボクが選んだのが、栗林みえさんだったのです。
この構造は大人数アイドル*を応援する構造と近いものがあるでしょう。まさに、だれを推しメンにするのか…という話です。
(「ヴァニーナイツ」第2話に子役の頃の[大島]優子がチラッと出ている…というのはボクもあとで気付いたことですが、なにか少し因縁めいたものを感じたりもします)
栗林さん自身は、あまりアイドルとしての寿命が長い人ではありませんでした(翌年の秋には芸能界を引退しています)。
しかしながら、ここで「栗林みえ」を選んだということが、ボクがアイドル好きになったはじめの一歩だったのです。ボクは栗林みえを選び、そのことによって同時にアイドルを(ドルヲタであることを)選んだのでした。
なにか、それまでに知っていたものとは別の世界がある…。そのことに気づいたことが、作品を見ることから、アイドルを見ることへの転換の第一歩だったのです。
この後、ボクはチェキッ娘の上田愛美さんを選び、モーニング娘。の飯田圭織さんを選び…って、ものの見事にみんな黒髪ロングの子ですが…(-_-;)
それはともかく…そうして急速にドルヲタへの道を進んでいったのでした。
つづく