ヤッターマン
2008年日本、111分
監督:三池崇史
主演:櫻井翔
概要
邦画界の鬼才、三池崇史監督が人気テレビアニメーション「ヤッターマン」を実写化した型破りな娯楽大作。奇跡の石をめぐり、ヤッターマンとドロンボー一味が繰り広げる攻防を独自の世界観で描く。正義のヒーローにふんするのは『黄色い涙』の櫻井翔。その相手役に『櫻の園 -さくらのその-』の福田沙紀、ドロンジョ役に『下妻物語』の深田恭子とフレッシュな面々が顔をそろえる。オリジナル版をさらにパワーアップさせた、迫力の戦闘シーンや変身シーンなども見逃せない。(シネマトゥデイより)
感想
小さい頃、「ヤッターマン」が好きだった。ボクが何より興奮したのは、セクシーなドロンジョ様…ではなく(笑)、ヤッターワンをはじめとしたヤッターメカ。多くのロボットアニメが、結局のところ「力比べ」で勝つのに対し、小型の「ビックリドッキリメカ」を出して、アイデアで勝つのが素敵だった。
1.
さて、三池版のヤッターマン。正直、キャストはどうでも良いや。裏の事情が透けてしまうところが、邦画の致命的な欠点だと思うけれどね。今作のキャストは良くもなければ悪くもない。
問題は映画の作り。三池さん自身が「とにかく明確だったのは、子供の頃に見た『ヤッターマン』の感じを、限りなく再現したいということだった」と言っているように、原作に対する愛は感じるし、アニメを実写化した数多の作品のなかでは、悪い部類に入るわけではない。
ただ、分かってないな…と思うところはいくつかある。
2.
まずストーリー面。バカバカしく作ってあるんだけれど、やっぱり「映画」になってしまっているんだよね。映画的な山場があって、エンディングを迎えて…という作りがいかにも映画的なんだ。
だから、こう…毎週毎週、性懲りもなくドロンボー一味が悪だくみをして…っていうあの感覚からかけ離れてしまっている。なんたって、TVシリーズは「今週のビックリドッキリメカ」って言ってたくらいなんだから(笑)
この映画も最終的にはそれっぽい雰囲気を出しているんだけれど、やっぱりどうしても映画になってしまっているんだな…まあTVシリーズと映画でリズムが違うのは、やむを得ない部分もあるんだけれどね。
ただ、「ドラえもん」の大長編みたいに完全に映画として割り切った作りというわけでもなく、なんか色々と引き摺りながらやっているから、映画としても中途半端な出来になってしまっている。
3.
あとは情報量の問題。さっきのがTVと映画の違いなら、こちらは実写とアニメの違いに由来するもの。
アニメ…とくにTVアニメの場合、セルはもちろん、背景もそれほど描き込むわけにはいかない。そのシンプルな線とセルの浮遊感がアニメ特有の魅力となる。
この実写版ヤッターマンは、そういう意味では画面がゴチャゴチャしすぎている。画面の情報量が多すぎて、肝心のキャラクターやメカに集中できない。しかも、アニメだったら脱臭された表現になるものでも、実写でやると生々しくなってしまう。
こうした媒体の違いに無頓着だったことで、結果として、今作は映像面においてヤッターマン特有の雰囲気を作ることに失敗している。ルック的にはむしろ戦隊シリーズに近いくらい。
4.
それに輪をかけているのが、肝心のメカデザイン。良いメカデザインというのは、いくつか種類があると思う。なかでも、大きく分けて、二次元的か三次元的かという分け方が出来るだろう。
3次元的に良いデザインというのは、平たく言えば、おもちゃ(あるいはフィギュア)が出たら買いたくなってしまうようなデザイン。二次元映像なのだけれど、手で触れられそうなデザインと言ってもいい。
これの典型的なのが大塚康生さんや宮崎駿さんの描くマシン。それから、「マクロス」の河森正治さんや「魔神英雄伝ワタル」の中沢数宣さんのデザインなんかも、このタイプ(「エヴァ」の山下いくとさんのは、二次元と三次元の中間かな…)。
そしてもちろん、この三次元的デザインの代表格として、「ガンプラ」を生み出したガンダムの大河原邦男さんを挙げることができる。ヤッターメカもこの大河原さんのデザインなんだ。
ヤッターワンも、赤白黄の塗り分けとか、シンプルで丸みを帯びているんだけどどこかゴツゴツとした造形とか、そのまま玩具として画面の外に出てきちゃいそうなデザインになっている。プラチックとかブリキの質感まで感じられちゃいそうなね。
そこへ行くと、今作のヤッターワンは…たしかにカッコ良い。全身真っ赤でね。ただ、これはボクの感覚で言うと、二次元的に…イラスト的にカッコ良いデザインなんだ。
このヤッターワンのおもちゃ/フィギュアがあっても、ボクは欲しいと思えないと言うか…。今作のメカデザイン(リファイン)を手掛けた寺田克也さんは、実写版パトレイバーのレイバーイメージデザインでもクレジットされているけれど、あれもボクはいまいちピンと来なかったんだよな…。
監督の三池さんもそうだし、この寺田さんもおそらく、マシンに対するフェティッシュな感覚を持ってない人なんじゃないかな…という気がする。絵はべらぼうに上手い人だと思うけれどね。
5.
そんな感じで、ま、総合すれば悪くもないけれど良くもない…あえて実写でやった必然性も(ビジネス面をのぞけば)感じられない…けれど、別に見られなくはない…という映画かな。
☆☆☆★(3.5)
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