『るろうに剣心 京都大火編』
2014年日本、139分。
監督:大友啓史
主演:佐藤健
概要
和月伸宏原作の人気コミックを基にした2012年の前作に続き、原作のクライマックスともいうべき「京都編」を前後編で実写映画化したアクション大作の前編。日本制圧をたくらむ強敵を倒すべく京都へと向かう、人斬り抜刀斎こと緋村剣心の活躍を描く。主演の佐藤健やヒロインの武井咲らが引き続き出演するほか、剣心の宿敵役の藤原竜也や伊勢谷友介らが新たに登場する。監督は、前作と同じくテレビドラマ「龍馬伝」や『ハゲタカ』などの大友啓史。迫力満点のスケールと驚異的なアクションに目を奪われる。(シネマトゥデイより)
るろ剣…
『るろうに剣心』には、ボクは複雑な想いがある。
ボクがまだジャンプを毎週買っていたころ、ある号の読み切りにもう圧倒的に好きな作品が現れた。それが『るろうに剣心』だった。あの世界観。剣心のあのすっとぼけたキャラクター。その時からもうほとんど設定は固まっていた。
それから約1年後、「るろ剣」の連載がはじまった。和月伸宏は藤崎竜と並び、無名時代にボクが発見した「ボクの作家」となった。「るろ剣」はもちろん、ボクのもっともお気に入りの連載のひとつだった。
いつからだろう。そんな作者の能力に疑問を抱き始めたのは。
志々雄に対する思い入れが強過ぎて、一歩引いたところから物語を構築できなかったところも痛過ぎた。作者の想いばかりが先走って、読者が置いてけぼりにされてしまう。その時、ボクはこの作者の限界を知った。
作者の想いが先走りする傾向はまた、世界観にも重大な影響を及ぼした。たしかに、明治期を活き活きと描きとったその世界観は素晴らしかった。でもいつしか、その世界は彼が好きだったアメコミや格闘ゲームに侵食されていった。
藤崎竜の『封神演義』のように、さまざまな要素が溶かされてひとつの世界が構成されているものではなく、「幕末・明治」+「アメコミ・格ゲー」という世界になっていった。それはあまりにも未熟でチープなものにボクには見えた。
アニメは剣心の声を女性が演じているのがたまらなく嫌だった。
感想
さて、感想です。
実写版2作目なわけですが、1作目は(見たけれど)レビューしなかったので、まずはやはりキャスティングの問題からでしょうな(原作好きが勝手に斬りまくるだけなので、出演者のファンの方は読まない方が良いです)。
1.佐藤健=緋村剣心?
まず、佐藤健くんは、そんなに悪くはありません。たしかにカッコイイですし、殺陣もさまになっている。彼が居たから実写化に踏み切ったという話も、あながちでまかせでもないんでしょう。
ただ、剣心か…と言われたら、そこは微妙なんですよね。それはなにより、積み重ねた年輪からくる深みの問題ですよ。剣心って、読み切り当初から三十路説があったくらいで。童顔だけど、動乱の幕末をくぐり抜けてきた…という深みがなきゃいけんのだと思うのです。
たとえば西島秀俊さんとか、実際には割りと年がいっているんだけれど、妙に若く見える人っているじゃないですか。ああいうタイプの(年齢不詳の)人をキャスティングした方が深みは出たと思うし、ボク的にはしっくりくるんですよね(西島さん自身は剣心役は合わないと思うけれど)。
佐藤くんは悪くはないんだけど、やっぱりふとした瞬間に「茶髪のにいちゃん」に見えてしまうんですよね。良い役者さんだとは思うけれど、積み重ねた年輪からくる深みというものがどうしても足りない。
そう、それから髪色ね…漫画やアニメを実写化する際にもっとも悩むのが、リアリティの程度をどの程度に設定するかという問題だと思うのです。髪色の問題ってのは、その典型的な例ですよね。剣心が染めていたとは思いたくないけれど、だけどあんな赤毛は日本人にはいないし…と、考えていくとキリがないわけですよ。
漫画だったら、それは漫画だからってことで回収できちゃうんですけどね。だけど、実写でそれをやろうとすると「染めている」ように見えてしまう。赤毛に染めた現代の若者に見えてしまう。だから、「コスプレ時代劇」という印象になってしまうんですよね。
とは言え、原作通りにやる…というのは、そのリスクを踏まえてもなお、ひとつの見解だったと思うのです。この映画は、そうした漫画的要素を、実写世界のなかにそれなりにうまく溶かしていたと思いますしね。
2.武井咲=神谷薫?
ただ、そうなってくると、理解できなくなってくるのが武井咲さんのことです。ボクは武井さん好きですし、薫というイメージにも合っていると思います。でも、今作の武井さんは、なんですか、あれは。
まず、なんで髪があんな茶色がかってるんだ…って、アイドルの茶髪論争みたいに言ってますけど、いや、そういうことじゃなくて。だって、神谷薫ですよ。わざわざコスプレ化してしまうようなリスクを犯して剣心を赤毛にしているのに、なんで薫の髪がああなんですか。
薫と言ったら、もう青みがかったくらいの黒髪で…ってコミックスの表紙を見てみたらホントに青が入ってましたけど(笑) あの茶色がかった髪が武井さんの地毛だったとしても、剣心を赤毛に「染める」んだったら、武井さんの髪は真っ黒に染めなきゃさ…。カッコつかんでしょ。
しかも、何だか妙に日に焼けていたし。その方が「リアル」だって考え方もあるかも知れんですが、いやいやいや…明治期に茶髪や金髪がウロウロする世界で、そんなリアルはいらんです。
それで何がダメになっているかと言えば、映画そのものの画がダメになっているんですよね。剣心に別れを告げられるシーンで、背景をボカして薫のアップを映しているんですが、もう画が決まってない。すごくぬるい画になっている(要はコントラストの問題です)。
「スポ根もの」だったら、画面内外の強い日光に回収されるはずなので、別に肌が焼けていても良い(画になる)んですけどね。ああいう出立ちで、ああいう画の作り方で、それで日に焼けているから、もう全然決まってないんです。
たとえば、『花のあと』で、(薫とおなじ)若き剣術師範を演じた北川景子さん。透き通るような白い肌で、漆のような黒髪で、道着姿がめちゃくちゃにカッコよかった。あの感じですよ。「るろ剣」実写版も、あの感じで別れの場面を撮れていたら、確実にキメのショットになったでしょうに。
それは好みの問題というより、クオリティの問題ですよ。目を瞑ってその映画を想った時、どんな画が頭に思い浮かぶか…という話です。アップのシーンで美しい印象を残しておくからこそ、のちの展開でも効いてくるわけですしね。
もちろん、北川景子と武井咲では役者としての格が違います。なにより目が違う。だけど、それよりなにより、今回に関してはコンディション(髪色/肌焼け)の問題ですよ。あの武井さんのコンディションが監督の演出だとしたら、ボクは間の抜けた演出だと思いますし、あれが武井さんの問題だとしたら、ボクは彼女は役作りというものを舐めていると思います。
あんなコンディションで出るくらいだったら、降板させて別の役者にやらせた方が良かった。その方が遥かに画のクオリティは確保できましたよ。アップで勝負できないヒロインなんざお話になりません。
3.その他…
それに限らず、この実写版「るろ剣」は、女性陣が壊滅的にダメだったと思うのです。蒼井優さんの演技はさすがだけど、恵じゃないでしょ(ボクのイメージで言えば、たとえば香椎由宇さんとかね)。
そして、今作で致命的なのは、なんといっても操ですよ。武井さんに関しては、役そのものに合っていないというよりも、コンディション(髪色/肌焼け)の問題だったと思うのですが、操役の子は、もう端から役に合ってません。
あんな丸顔の子が操である筈がありませんよ。操と言ったら、あの鋭角な顔が特徴なんでしょうに。なんでわざわざ、あんな丸顔の子をキャスティングしたか。演技もいまいちだったですし、ショックを受ける場面でも、なんか間の抜けた印象でした。キャンキャンした操がショックを受けるからこそ、あの場面が活きるんでしょうに。
(朝ドラのヒロイン? どうだっていいですよ。そんな話は)
もしかしたら、この監督さんが女優を撮るのが致命的に下手なのかも知れんですがね(『ハゲタカ』の時もあの栗山さんを下手に撮ってましたし)。
一方、男性陣はなかなか良かった。ダメだったのは左之助くらいかな…彼は役者としての「格」がなさすぎて、左之助というキャラクター自体がやたら小物に見えてしまうんですよね。原作だったら、たとえばルパンにおける次元くらいのポジションにいるキャラクターなのにさ。
薫や恵や操もそうですが、剣心一派にミスキャストが多いことが、この映画のクオリティを著しく損ねていると思うのです(弥彦役の子も何にも光ってませんでしたし)。
良かったのは、むしろ周りの方。志々雄の藤原くんは相変わらずカッコいいし(彼の場合は、顔が映ってなくても声だけで演じてしまうことが出来るんですよね)、斎藤一の江口さんもハマり役だと思います。宗次郎は神木くん以外考えられなかったと思うしね。
翁の田中泯さんもさすが。伊勢谷=蒼紫はまあまあかな…衣装デザインが良くなかったですね。拘束衣みたいだったし、もっとパキっとしてなきゃさ。まあ蒼紫に関しては、先述したように、操役の子が足を引っ張り過ぎですよ。あの子の想いが伝わるからこそ、蒼紫の哀しさがクローズアップされるわけだから。
で、比古=福山は…笑うとこ?
そんな感じですかね。
4.
映画の感想としては、志々雄編の真ん中でバッサリ切った感じで、あまり映画という感じにはなってないですね。それから、蒼紫のエピソードと志々雄のエピソードが有機的に絡み合っていかずに、そのまま複線で走っている感じで、散漫な印象があります。
殺陣は悪くないけれど、欲を言えばゴチャゴチャしすぎかな。「アクション」になっちゃっているでしょう? 「るろ剣」の剣技って、もっとこう…静と動がくっきりと分かれていて、緊迫感があるものだと思うのです。スピード感があって、悪くはないですけどね。
☆☆☆(3.0)