『思い出のマーニー』
2014年日本、103分
監督:米林宏昌
主演:高月彩良
概要
『借りぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌が監督を務め、ジョーン・G・ロビンソンの児童文学を映画化したファンタジーアニメ。北海道を舞台に、苦悩を抱えて生きる12歳の少女杏奈と彼女同様深い悲しみを心に宿すミステリアスな少女マーニーとの出会いを描写する。『ジョーカーゲーム』などの高月彩良と『リトル・マエストラ』などの有村架純が声優を担当。主人公たちの目線で捉えた物語に心打たれる。(シネマトゥデイより)
感想
1.絵
う~ん…なにから語ろうかな…
まず絵の問題。移動の場面でCGを使うことが別に悪いとは思わない。光のエフェクトを使うのも別に構わない。たしかに、絵は「綺麗」だ。だけど、この絵が「生きている」とはボクにはどうも思えないんだな…。
たしかに、それは半分は意図的かも知れない。主人公の杏奈から見えている世界がそのように(死んだように)見えるという点ではね。でも、たとえば、杏奈が窓を開けて「ハ…」っとする場面でも、こっちにはそのように見えない。それは単に失敗だろう。
それに、絵が絵に見えてしまう。ボクが映画の「画が絵のように見える」…と言うのは、大体、褒め言葉なんだけれど、今回は逆。アニメの絵はそれ自体が世界に見えなければならないのに、この映画では、時々、ただの一枚絵に見えてしまう…ということ。
たとえば、大岩家の外見。なんか、世界って感じがしないんだな…。たとえばさ、『トトロ』で、「サツキとメイの家」がはじめて登場した時に感じたような、あの感じがしない。極端に言えば、ただ家の描いてある絵がそこにある…って感じがしてしまうんだ。
あるいは、森の場面。水彩画のようなタッチで、背景の木々には空気遠近法を用いている。だけど、手前のキャラクターは当然セルなので、(これも極端に言えば)セルが浮いて見える…と言うより、水彩画の上にセルが置いてあるように見える。だったら、普通に木々はレイヤーで処理して、それでカメラの背景ボケの効果を用いれば良かったんじゃないか…。
(追記:『トトロ』を見返してみて、別の問題に気付いた。それはひとつには、ボクが余白=塗り残しが気になってしまうということ。光の飽和表現の一種なんだろうけれど、アニメの場合、この森の場面[↓動画 01:19]のようなやり方でやると、世界が閉じられている感じがしなくなってしまう。もうひとつは、カメラを置く場所の問題。杏奈目線の物語の割に、時々、カメラの位置が不必要に高すぎるんだな…)
それから、これも少し似た問題なんだけれど、セルと背景の使い分けも気になってしまう。たとえば、「洗濯物を入れた籠」はセルで描かれていて、その隣に置いてある「トマトを入れた籠」は(同じ材質なのに)背景画で処理されている。あるいは、トマトを摘むシーンで、手に持っているトマトはセルなのに、木になっているトマトは背景画とかね。
もちろん、他のアニメでも、そういうことはある。セルと背景はもちろんディテールが違うわけで、それはアニメが抱えるもともとの問題でもある。あるんだけど、気になってしまうということは、そこになにか問題があるんだとも思う。
そういうひとつひとつの積み重ねが、世界を構築していく。そうしてはじめて絵は生きてくる=世界になる…のだとボクは思う(宮崎さんだったら…とは言いたくないんだけどね)。
(これはじつは『かぐや姫の物語』にも感じたこと。あれはやたらめったら作画枚数を使って、しかも難しい技術に挑戦していた…にも関わらず、世界を構築することに「失敗」していた。最近のジブリにはそうした問題があるのかも知れない)[追記:『思い出のマーニー』の背景についての僕なりの結論のようなもの]↓
2.声
それから、声の問題。声の問題って言うと、なにか声優に問題があったように聞こえるけれど、そうじゃなくて演出の問題。『トトロ』でお父さん役を演じた糸井重里さんが、「ふだんのままやったら、怖い感じですよ、人がしゃべっているところって」*と言っていたけれど、まさにそんな感じ。
(*だから糸井さんは意図的に柔らかくしたって話、宮崎映画の例ばかり出して申し訳ないけれど)
これも意図的な演出なのかも知れないけれど、誰もかれも話す言葉が(話し方が)陰気くさくて、正直、参ってしまう。とくに序盤はホントに見ている(聞いている)のが辛い。1時間くらいでもうお家に帰りたくなってしまった。脚本も含めて、この映画のジメジメ…っとした感じが耐え難くなってしまうんだ。
別にそういう映画を作りたければそれはそれで構わないけれど、それで膨れ上がったジブリの人件費を賄うのは難しいんじゃないの…と余計な心配をしてしまう。
3.ストーリー
ストーリー的には序盤から退屈だし、中盤でもさほどペースは上がらないし、う~ん…って感じなんだけど、最終的には泣かされてしまったから、ボクの負け(まあ、泣けば良い映画かって言うと、また話は別なんだけどね)。
そういう意味では、上でも書いてきたように、監督の意図として分かる部分もある。だけど、やっぱりなんかスッとしない。とくに細かいところで未熟さを感じる。
ラストシーンもそう。ある「語り」の時点で、ほとんどの鑑賞者は真相に気付いてしまっているのだから、わざわざ2段構えにする必要なんてまったくない。
だからたとえば、ボクは一段目の時点で泣いちゃって、二段目で主人公が泣いた時には、「え…気付いてなかったの…?」と、少し肩透かしを食らったような気分になってしまった。そこはやっぱり、主人公と鑑賞者の真相に気付くタイミングを合わせないと、感情的にも同調できないだろう。
オープニングもそう。序盤が暗い…というのは、物語の構成上、仕方がないのかも知れない。でも、冒頭から延々と陰気な場面を見せられる方はたまったもんじゃない。
だったら、オープニングで(たとえば入り江の)夢の場面でも何でも作って、ボーンと鑑賞者を引き付けておいて、そこから夢明けズーンと沈めば良い。そうやって「予兆」を作ってやれば、鑑賞者も少しは耐えられるんだから。
4.キャラクター&
キャラクターはそこそこ魅力的。主人公2人は良いけれど、周りは…と言う感じかな。そもそも、物語の「ために」イヤな奴を作るってやり方は、ボクはダイッ嫌い!なんだ。
それに、(キャラクターとしてイヤな奴というわけではなかったけれど)あの「ふとっちょブタ」はどう見ても少女には見えんかったぞ…。
まあしかし、色々と書いたけれど、泣かされてしまったわけだから、ボクの負けということで星4つ。悪い映画ではないけれど、これでジブリを支えられるか…と聞かれれば疑問かな。
☆☆☆☆(4.0)
追記:僕なりの解題のようなもの