マレフィセント(3.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
『マレフィセント』
Maleficent
 
2014年アメリカ、97分
 
監督:ロバート・ストロンバーグ
 
主演:アンジェリーナ・ジョリー
 
概要
 ディズニーアニメ『眠れる森の美女』ではオーロラ姫に呪いをかけた悪役だった、邪悪な妖精マレフィセントを主人公とするダークファンタジー。マレフィセントをアンジェリーナ・ジョリーが演じ、彼女の封印された過去とオーロラ姫を永遠の眠りにつかせる呪いをかけた理由が明かされる。監督は、『アバター』などのプロダクションデザインを手掛けたロバート・ストロンバーグ。エル・ファニングやアンジーの娘ヴィヴィアン・ジョリー=ピットが共演。おとぎの国のごとく幻想的で美しく、一方でダークな映像世界に期待できる。(Yahoo!映画より)
 
はじめに…
 「古典」には、普遍的な美しさがあります。いくら古くさく見えたとしても、そこには、ある種の様式美が見て取れるのです。
 
 近年のディズニーは、自らが築き上げてきた物語の様式美を否定する方向に進んでいるように見えます。『アナと雪の女王』なんて、まさにその最たるものでした。古き良きディズニー・ミュージカルを彷彿させる『アナ雪』は、その一方でディズニー的な物語へのアンチテーゼを含んでいたのです。
 
 しかしながら、古典的な主題を扱いながら、同時にそれを否定するということは、その物語が持つ自然な流れに逆らって、その物語を描かなければならない、ということになります。そして、そのように描くことで、そうした古典的な主題が持っていた様式美も失われてしまうのです。
 
 こうして出来上がった物語は、往々にして、どこかいびつで、構造的な美しさを欠いたものになります。そして、『アナ雪』はまさに、そのような物語になっていました。あの映画を批判する多くの人は、その点を批判していたようにボクには思えます。
 
 とは言え、『アナ雪』には、それを補ってあまりある魅力がありました。それは第一にあの歌ですし、そしてあの映像です。スカスカな物語を、あの歌とあの映像が埋めた。それはつまり、構造的な欠陥を補ってあまりあるディテールの素晴らしさがそこにあったということになるでしょう。
 
感想
 『マレフィセント』も、まさにそのような映画です。ただ、歌がないことだけが違いますかね。以上、感想終わり。
 
 …って、わけにはいかんでしょうが、まあしかし、そんな感じです。物語の構造的には、あまり「美しい」ものだとは思えません。原作(ディズニー映画『眠れる森の美女』)で重要な位置を占める「妖精たち」や「王子」なんて、ほとんどその存在意義が良く分からんくなっていました。
 
 その一方で、(常套句ですが)「映像は素晴らしい」ですよ。(ディズニー映画ではいつも思うことですが)ただ技術に優れているだけでなく、ちゃんと画が絵になってます。特に「夜の森」の場面なんて、まさにファンタジー。まるで、「ファンタジー」というものの理想形がそこにあるようです。
 
 背景の9割がCGというような映画で気になるのは、やはりCGと実写映像との合成がどうなっているか。継ぎ目がどこか…というようなレベルではもはや(もちろん)ありませんよね。ただ、「あ…これは実際のものを映しているな…」というのは、なんとなく分かります。継ぎ目は分からないんだけど、物自体が「CG」か「実際の物」か…というのは、なんとなく分かる。
 
 それは、おそらくディテールの問題なんですよね。そして、それがじつは重要なのかも知れなくて。
 
 たとえば、フルCGの『アナ雪』は、CGにしては圧倒的なディテールを持った映画なわけですが、仮に、そこに実写映像を加えてみた場合、やはりディテールの違いが分かってしまったことでしょう(原子の大きさからCGを組み立てるのは不可能でしょうから)。
 
 実際にCG+実写映像である『マレフィセント』の場合も、その違いは気になるほどではありません。しかしながら、そのほんの僅かなディテールの違いが、もしかしたら作品の完成度に影を落としているのかも知れないな、とも思います。
 
 それはまず第一に、世界そのものに亀裂を生じかねないからですし、第二に、構造的な美しさに欠けたこの映画において、こうしたディテール上の問題は致命的なものとなり得るからです。『アナ雪』と同じような構造的な欠陥を抱えているのに、それを上回っていけるだけのディテール的な魅力を、この『マレフィセント』は持っていないわけです。
 
 それに、実際の俳優を使っているわけですから、マレフィセントが100%マレフィセントではない…というところも気になるのです。それはアナやエルサとは違いますよね(これはアニメと実写との間に横たわる根本的な問題なので、それを指摘するのは不毛なことなのかも知れませんが)。
 
 アンジーは、おそらくハマり役なんだろうと思いますし、役作りも相当したんだと思います。でも、気高き魔女「マレフィセント」が、時にアメリカのアクション映画女優のように見えてしまう。それはこの作品の世界観と気品とを損ないます。アンジーが他ならぬアンジーであるという理由によって、時にこの映画はとても安っぽく見えてしまうのです。
 
 それに、あの妖精たちのグロテスクなこと…。
 
 古典を越えることを目指したこの映画は、しかしながら、普遍的なものを構築することには失敗したようです。
 
☆☆☆★(3.5)