『アナと雪の女王』
FROZEN
2013年アメリカ、102分
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
主演:クリステン・ベル
概要
アンデルセンの童話「雪の女王」をヒントに、王家の姉妹が繰り広げる真実の愛を描いたディズニーミュージカル。触れた途端にそのものを凍結させてしまう秘密の力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変えてしまったことから、姉と王国を救うべく妹アナが雪山の奥深くへと旅に出る。監督は、『サーフズ・アップ』のクリス・バックと『シュガー・ラッシュ』の脚本家ジェニファー・リー。愛情あふれる感動的なストーリーはもちろん、美しい氷の世界のビジュアルや個性的なキャラクター、壮大な音楽など、ファンタジックな魅力に酔いしれる(Yahoo!映画より)
感想
これはダメだ…
アンデルセンの『雪の女王』にインスパイアされたという本作。ディズニーへのある種のアンチテーゼを含んだようなストーリー展開は、ちとヒネってはあるものの奇妙なほどにスカスカだ。あらすじを文字に起こしてしまえば、きっと味気のないものに感じてしまうだろう。
だけど、これはダメだ…何を言ってもボクは抵抗できん(resistance is futile)。とにかく圧倒的すぎる。最初の15分くらいで涙が出そうになってしまう("for the first time in forever")。なにがって、なにが…歌と光…。光と歌。
アニメってのは非現実的なモノだとボクらは思っている。童話の世界ってのは非現実的なモノだとボクらは思っている。魔法やトロールが出てくる幻想的な物語に、現実の光を当てるものは、現実の光そのものだ。彼らがLighting(照明効果)にどれだけの人員を割いているか、エンドクレジットで確かめて欲しいくらい。彼らが光というものにどれだけの労力をかけているか。
氷、水、雪、それぞれに光が当たって、反射し、透過し、屈折する。ただそれだけのことなんだけれど、この現実世界では当たり前のそんなことが、どれだけスゴイことなのか、この映画は気付かせてくれる。
なにより注目すべきなのは、衣装の生地なのかも知れない。その素材感。何の素材を使っているかも分かってしまうような、繊細な表現がなされている。そしてここにも照明効果が活きている。それぞれに反射率が違うそれぞれの素材。まるでその触感までも伝わってくるような存在感。
かつて、芸術は手のものだった。画家はギルドの親方だった。手に職をもつ職人だった。いつしか、芸術は手のものから離れていった。レディメイド(既製品)を持ってきて展示することが芸術でありえるなら、芸術が手のものであり得るはずがない。だけどいま再びこうして、細部に対するこだわりが芸術そのものを作り出す。
それも単に技術のための技術ではなく、細部にこだわることで、幻想の世界に現実の光が当てられている。そうして、この幻想世界に魂(anima)が与えられる。「生命の幻影(illusion of life)」ってのは、まさしくディズニーが合言葉としてきた言葉だ。
そして、細部にこだわることで生まれる、圧倒的な情報の密度。アニメなのにやたら細かいところまで見てしまうんだ。さらに、歌が時間の隙間を埋める。空間的にも時間的にも圧倒的に密度が高い(だから逆に物語の密度が薄くなっているとも言えるんだけど)。
上映終了。ブラックアウトする画面。「あれ?世界ってこんなに静かだっけ?」…ふとそんなことを感じた。この映画は世界に花を咲かせていた。
☆☆☆☆☆(5.0)
P.S.
吹き替え版で見たけれど、神田沙也加さんの歌がかなり良い。松さんも悪くないんだけど(というかボクは歌手松たか子のファンだけど)、それでも歌では神田さんに分があるかな…声質がピッタリなんだよね。逆に演技では松さんって感じ。