アップサイドダウン 重力の恋人
UPSIDE DOWN
2012年フランス/カナダ、109分
監督: フアン・ソラナス
主演:ジム・スタージェス
概要
『スール/その先は…愛』などで知られるアルゼンチンの巨匠、フェルナンド・E・ソラナスを父に持つフアン・ソラナスによるSFロマンス。二つの惑星が重力で上下に引き合う世界を舞台に、上下別々の星で暮らしていた男女の運命的な恋の行方を映し出す。主演を務めるのは、『ラスベガスをぶっつぶせ』などのジム・スタージェスと『メランコリア』などのキルステン・ダンスト。自然や都市が上下に広がる世界の不思議なビジュアルはもちろん、ロマンチックな物語も魅力的。(Yahoo!映画より)
感想
SFとはどういうものだろうか?
ボクは、まず何らかの科学的設定(これは架空のものでも良い)を決め、その設定に従って、ある状況を忠実にシミュレートするものだと思う。
この映画は、そのセオリー通りに作ってある。映画冒頭、この世界のルール(科学的設定)がまず言明される。「この世界はどういうものなんだ」ということを、言葉で説明する。そして、その設定に従って「世界」が描写される。
こうやって書くと、やっていることは、とてもシンプルだし、ことによると「地味」にさえ思えるかも知れない。だけど、その結果は驚くべきものだ。「素晴らしい」。他に言葉はない。こういう「絵」を描けるということ…それがただの思い付きではなく、ちゃんとひとつひとつのものに意味があるということ…
かつて、少年の頃にクラークの名作「宇宙のランデヴー」を読んだ時に空想したような「世界」、それがまさにそこにある。ボクはいま、SFファンにとって、とても幸せな時代が訪れていると思う。
この作品について、他になにか言うべきことはあるだろうか。雨の代わりに空から油が降ってきたり、逆世界の物質によって重力が相殺されたり、雲の上に街の灯りが見えたりすることの他に?
詩人が地球上の事物から幻想を紡ぎ出すのと同様に、SF作家は架空の世界から幻想を紡ぎ出す。平凡なラブストーリーも詩人の手にかかれば、至玉の幻想となる。
似たような設定の『サカサマのパテマ』と同様に、本作も映画としては完璧なものではない。これは、とても平凡なラブストーリーだ。だけどこれは、最高のSF的幻想だ。これにボクが5つ星をつけずに、他の何につける?
☆☆☆☆☆(5.0)
P.S.
この映画で詩的ではないものがあるとすれば、それは邦題。