『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
2013年日本、99分
監督:長井龍雪
主演:入野自由
概要
深夜に放映され大きな反響を呼んだテレビアニメに、過去の出来事やラストから1年後のエピソードを追加した劇場版。幼い頃に死んだ少女が成長した姿で仲間たちの前に現われたことから、彼女と仲の良かった5人が再び集結し、過去と向き合う姿を映し出す。アニメーション制作を、テレビアニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などのA-1 Picturesが手掛け、『とある科学の超電磁砲』シリーズなどの長井龍雪が監督を務める。自然豊かな情景とともに紡がれる、みずみずしいストーリーに魅了される。(Yahoo!映画より)
感想
2000年代のアニメ作品と聞いて、何を思い浮かべるだろう。『涼宮ハルヒ』…? 『コードギアス』…? あるいは、宮崎作品のどれかだろうか。ボクは…『とらドラ』を挙げたい。物語としても極めて完成されているし、柔らかな映像表現、微細な心理描写、キャラクターの魅力…どれも特筆すべきものだ。あれは歴史に残る名作だとボクは思う。
『あの花』TV版は同作の主要スタッフが再結集して作った作品だ。流れるような展開、突き刺すような言葉、押し寄せる感情の波。『とらドラ』で培われたノウハウが存分に発揮されている。こういう分析をするボクはくそったれだ。それでも、ボクはこの作品が好きだし、『あの花』はボクの心に強く訴えかけるものがあった(大体、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」とか、いかにもボクが言いそうなことじゃないか)。
ただ、いくつかの場面でのキャラクターに対する演技のつけ方や、特に最後のまとめ方が(泣かされたけどね)納得いかなかった。物語自体に力があるんだから、その力に逆らわずに描き切ってしまうべきだったんじゃないか…。それに逆らって、「演出意図」なるものでキャラクターの動きを規制してしまえば、途端に物語全体が「作りもの」であることを露呈してしまう。そんなことを感じさせる最終話だった。物語の終わらせ方というのは、ホントに難しい。
それを取り返すことが出来るかも知れない。 ボクのそんな淡い期待は、映画が始まって程なく覆された。「蛇足」…イヤな言葉が思い浮かぶ。
そもそも、この映画は作る必要があったのだろうか。ほとんどTV版の(薄められた)総集編みたいな作りで、オリジナル要素は半分にも満たない。30分のOVAやファンブックの企画程度なら良かったかも知れない。でも、これはスクリーンで流すべき内容なのだろうか。スクリーンで上映するということを、ちゃんと意識して作っているのだろうか。
TV用に作られた映像をそのままスクリーンで流せば、単に引き伸ばされたように見えてしまう。解像度が落ちて、キャラクターの実線の粗が目立ってしまう。もともとTV用に構図を切っているせいで、画面上の情報の密度が圧倒的に足りない。これはそもそもTVサイズの映像なんだ。
大して予算もかけず、スクリーンで流して話題を作り、DVDやブルーレイを売れば、もちろんペイは出来るだろう。それでも、それに何の意味がある? こうやってダメになったコンテンツが一体いくつある?
そもそも、この物語はその最初の時点から着地点が決まっていた。あれ以上は進めようがないんだ。続編を作ろうとすれば、ウルトラCでも使わない限り、まったく別の物語にならざるを得ない(そして、そのウルトラCを使ってしまえば物語世界と主題が破綻してしまうから、それは決して使えない)。
だから、この映画では、物語をムリヤリ引き伸ばそうとして、過去を「語り直す」ということをやっている。それは、TV版にあった「余白」の部分を埋めていってしまう。すべて語り尽くされ余白を失った物語に何の魅力があるだろう。この映画には「物語」なるものは何も存在しない。語り尽くされ、もはや語るべき何ものもない飽和状態だけがそこにある。
☆☆☆(3.0)
(この映画自体の評価は2点だけど、この素晴らしい物語を作り上げたTV版に敬意を表して…)
映画『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』特別先行映像