終戦のエンペラー(4.0) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
『終戦のエンペラー』
EMPEROR
 
2012年、日本/アメリカ、107分
 
監督:ピーター・ウェーバー
 
主演:マシュー・フォックス
 
概要
 敗戦直後の日本を舞台に、その後の日本の運命を決定づけた知られざる感動の物語を、マッカーサー元帥の指示で天皇の戦争責任の有無を調べることになった親日派の青年フェラーズ准将の目を通して描く日米合作の歴史ドラマ。主演はTVシリーズ「LOST」のマシュー・フォックス、共演に「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズ、「ノルウェイの森」の初音映莉子、「釣りバカ日誌」の西田敏行。監督は「真珠の耳飾りの少女」「ハンニバル・ライジング」のピーター・ウェーバー。(allcinemaより)
 
戦争責任
 「戦争責任」って言葉がボクにはいまひとつ良く分からんのですよね。
 
 それは「戦争を始めた責任」なのか、「戦争のルールを破った責任」なのか、それとも「戦争に負けた責任」なのか。この3つはそれぞれ別の議論である筈なのに、「戦争責任」って言葉で一括されてしまっている。
 
 また、「極東軍事裁判そのものの正当性」という原理的な問題、「サンフランシスコ講和条約で承諾している」という実際上の問題もここに絡んできます。本来は複雑に絡んでいるものを、あたかもたったひとつの議論のように扱おうとするから、余計にこんがらがってしまう。
 
 (たとえば、昭和天皇に「戦争を始めた責任」があったとしても、そもそもそんなものを問えるのかという「極東軍事裁判の正当性」という原理的な問題がここに絡んできます。まず第一にそれは事後法ですし、第二にそれだったら戦争を始めた人は全て責任を取らなければいけない筈ですが、ベトナム戦争やらイラク戦争やら…極東裁判で裁いている方は責任を取っとらんじゃないかという問題があります。裁かれる方にだけ適用され、裁く方には適用されない法なんて法じゃありません。でも、実際問題として日本はサンフランシスコ講和条約で極東裁判の結果を受け入れているわけだから…と、これはやっていけば延々と長くなるわけです)
 
 まあ、それはそれとして…
 
感想
 良く作ってあるな~と思いますね。かなりマニアックな話も出て来ます。知識として知っている話でも、こうやって実際に再現して見せられると、やっぱり感動しますね。美術も素晴らしいですし、役者の質も高いので、雰囲気に引き込まれます。
 
 ただし、設定部分こそ史実に沿ってあるものの、物語部分はフィクションなので、筋としてはツッコみどころもあります。ヘタすると、主人公の恋愛で日本の命運が決まってしまったように見えてしまう。まあ、それはギリギリ回避しているように思いましたが、やはり恋愛要素は要らなかったという気がします。原作通り、河井道を出した方が良かったんじゃないかなあ…。
 
 恋愛要素を外すとマニアックな話ばかりになって客を選ぶというのは分かりますが、ハリウッドの悪いクセですよね。ハリウッドや日本のTV番組(特にゴールデン)は、Aの要素がある作品にBの要素を付け加えて、万人受けするものを作ろうとします。だけど、それは作品の純粋性を損なうから、結局、浅く広くしか受けない。
 
 現在はネット時代なので、映画鑑賞者も自分で情報を取りに行く時代です。それぞれの嗜好にピッタリとフィットした作品こそが生き残れる。たとえば、Aの要素がある作品ならば、その要素に特化した方が、ヲタ受けは良い。だからこそ、現代はヲタクが文化を牽引しているわけです。
 
 もちろん、ハリウッドでも分かっている人は分かっています。『シュガーラッシュ』とか『トランスフォーマー』とかね。ヲタクの世界がそのまま映画になったような作品はいくらでもあります。
 
 閑話休題。かなり話が逸れました…。
 
 わが国の国民である限り、歴史認識の問題には否応なく巻き込まれざるを得ないですし、この映画の描写にも賛否両論はあるとは思います。だけど、こうして一歩距離を置いて見ることで、見えてくるものもあります。
 
 ネタバレっても史実の話なので構わんと思いますが、マッカーサーとの会談の折の昭和天皇の発言はやはり凄いですよ(まあ、あれも通訳のアドリブがどうとか色んな説がありますけど、それはそれとして)。歴史上も現代も含め、我が身惜しさで情けない行動を取った多くの指導者たちを知るにつけ、あの瞬間の清浄さはいよいよ際立っていきます。
 
 そういう瞬間を捉えてドラマティックに描くのは、彼らハリウッドがもっとも得意とするところですよね。この映画はどこか『13デイズ』に通じるものがあります。ただ、恋愛云々の話でも分かるように、『13デイズ』ほどの完成度はないかな。脚本部分と史実部分の接続がいまいちでした。
 
 そうそう…ヒロイン役で初音映莉子ちゃんが出ています。最初は出ているなんて全く知らなかったから、「え?初音映莉子って、あの初音映莉子?」と驚いてしまった。懐かし過ぎる…。あの世代のアイドルはボクにとって、なんて言うか…ある意味で戦友みたいに捉えているところがある(SKEヲタが「我が軍」って言うのと同じかな)から、名前が出ていると我がことのように感じてしまいます。しかもハリウッド映画のヒロイン(゜o゜)
 
☆☆☆☆(4.0)
 

 
 

 
余談…
 いつもはYahoo!映画の紹介文を引用するのですが、今回はYahoo!映画が採用している「シネマトゥデイ」の紹介文ではなく、「allcinema」の紹介文を引用しました。
 
 おそらく「シネマトゥデイ」のライターはこの映画を見ていないです。歴史をまったく知らないヤツが、予告編を見ただけで書いたような紹介文でした(それとも、見たけれど内容をまったく理解できていないか)。これは「衝撃の事実にたどり着く姿を」描く映画などではまったくありません。「あらすじ」のこの文↓なんて特に酷い。スパイものか何かと勘違いしてるんじゃないか…。
 
「懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴き出していくボナー。ついに最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる。」(シネマトゥデイ)
 
 この紹介文を読んで興味を持った人が観にいけば、間違いなく肩透かしを食らうでしょう。そのような紹介文を載せるのはボクの主義に反します。
 
 (大体、この予告編もミスリードなんですよね…この映画は「真の戦争責任者は誰か?」という趣旨ではまったくありません。軍部/首脳部はもう捕まっている。では、天皇にも責任はあるのか?というのがこの映画が描いているものです)