『時をかける少女』
2010年日本、122分
監督:谷口正晃
主演:仲里依紗
概要
今まで何度も映像化・映画化されてきた筒井康隆原作のSF短編小説「時をかける少女」を新たな視点で映画化した上質の青春映画。母の代わりに1970年代にタイム・リープした娘の切ない体験を丁寧に描写する。ヒロインを演じるのは、アニメーション版『時をかける少女』でも主人公の声を担当した仲里依紗。その相手役の純朴な青年を『ROOKIES -卒業-』の中尾明慶が演じている。今も昔も変わらない人を思う気持ちにじんわりと胸が熱くなる。(Yahoo!映画より)
感想
今作の舞台設定は、原田知世さん版「時をかける少女」(1983)の舞台設定を引き継いだ上で、その30年後という設定になっている。仲里依紗さん版「時をかける少女」(2010)からは、原田さん版のような滲み出る品の良さは感じられない。仲さんは崩れた表情もするし、時には「ブサイクか?」と思えるような場面すらある。けれど、彼女がバシッと決めた時には、 こちらがハッとするほど凛々しい。そのメリハリこそが、この現代版には相応しいのかも知れない。でも、それはまた同時に、作品全体を包んでいた「あの」雰囲気が失われたことをも意味する。
原田さん版「時をかける少女」には、80'sの「あの」雰囲気が喩えようもなく映画の中に漂っていた。一方、仲さん版「時をかける少女」の方は、70'sの雰囲気を漂わせようとしているけれど、お世辞にも上手くいっているとは言い難い。それはやはり、どこまでも2010年代の映画なのだ。「だったら、逃げてないで2010年の世界を描き切ったらどうだ」とボクは思ってしまう。本来、「時をかける少女」は、タイムスリップものではあっても、タイムトラベルものというわけではなかったのだから。
映画そのものの筋立ては、(スピードワゴンじゃないけど)「淡~い!」って叫びたくなるような感じ。甘酸っぱく軽やかで、少し切ない、そんな王道とも云える青春模様が描かれている。これは脚本家さんのデビュー作らしいけれど、確かに、ベテランにはこんなものは書けないだろう。でも、なんだか、ママゴトみたいなんだな…どこか…。とってつけたかのような昭和ノスタルジーに「神田川」。生活感の感じられない世界。なんだか自分勝手に進んでいく物語。それに倣うわけじゃないけれど、ここでボクもまた、少し別の話をしてみよう。
以前、飲み会の席で、ある人がボクに向かって、「女の子が空から降ってくるのは、男の夢、ロマンだ!」ということを力説していたことがある。それは『天空の城ラピュタ』の話だった。ボクは、「ふ~ん、そんなもんか…」と思いながら、聞いていた。
今作の仲さんも、シータよろしく空から降ってくる。その場面を見ながら、ボクは、例の力説を思い出していた。その説は、それ自体の内に、つまり、ある女の子が空から降ってきて、そこに1人の男の子がいたってこと自体の内に、含んでいるものだろうか、お互い引かれ合うのは必然とも言えるような、運命の糸とも言えるような、そんなものを含んでいるのだろうか。空から降ってきた女の子と、下にいた男の子が、致命的に相性が悪かったらどうなんだろう。ひねくれた考えは、ボクが濁ってしまった証拠だろうか。
--閑話休題--
そんなことを考えている内に、何だか分からないけれど、ボクは、とても悲しい気持ちになってしまった。その良く分からない悲しさは、映画のラストで不思議と解消される。でも、それが解消されたことによって、この映画の評価は高くなるどころか、逆に低いものになってしまった。それは、おそらく、ボクを悲しくさせたその部分こそが、この映画の本質だとボクが感じていたからなんだろう。
☆☆☆★(3.5)