ロンドン五輪女子サッカー:準決勝
なでしこ 2-1 フランス
まあしかし、良く勝ちましたね~。なんでしょう…やはり、なでしこは何か持ってるんでしょうかね。とりあえず、試合を振り返ってみることにしましょう。
開始早々から、なでしこがボールをキープできる状態がしばらく続きました。フランスが高い位置からのプレスをかけてこず、サイドバックに対するアプローチも遅かったので、なでしこは比較的フリーに近い状態でパスを回すことができたのです。
しかし同時に、「この試合は難しくなるな」という予感もさせました。とにかく、フランスのゴール前に入っていくことが出来ないのです。バイタルエリアの手前でほとんど跳ね返されてしまう…のちにフランスが前がかりになって以降はカウンターで侵入できたこともありましたが、この試合を通じて、流れの中でなでしこがフランスのペナルティエリアに侵入した場面はほぼ皆無だったのです。バイタルにすら侵入できないので、シュート0という状況が長く続きました。
一方のフランスは14番のメシブを中心に着実になでしこのゴールを脅かしていきます。ボール支配率こそなでしこが優位に立っていたものの、フランスにとっては怖い場面は皆無であり、「このままではマズイ」と思っていた矢先、なでしこの方に突如としてゴールが生まれます。大儀見のキープから得たFK。むしろ、ハーフウェイに近いような場所だったので、直接に狙うのは難しい感じでした。そこでキッカ―の宮間はライナー性のボールをペナルティエリアに送ります。これをGKが信じられないようなミスで後ろに逸らしてしまいます。そこに待ち受けていたのは大儀見。DFともつれながらも、自らの身体ごとゴールへと押し込んで先制点を奪いました。
宮間が蹴ったライナー性のボールがGKのミスを生んだのですが、まあしかし、通常、代表クラスのGKがああいうミスはしないでしょう。こういう状況でああいうミスが生まれる。なでしこには間違いなく運もありました。そして、それを掴む実力/武器もあったのです。宮間が蹴ったボールの質は疑いようもなく世界トップクラスのものでした。味方には合っていなかったのですが、ある程度は相手がミスすることも織り込んだ蹴り方だったように思います。「あの辺にああいうボールを送れば何かが起こる」…そして、実際「何か」が起こったのです。
この先制点は、その後の試合展開を決する分岐点になりました。フランスはゴールを奪い返すために前がかりになり、より積極的に仕掛けてくるようになりました。対するなでしこは、ブラジル戦でも見せたように、ベタ引きしてしまうという悪いクセが出てしまいます。とにかく、ボールをシンプルに入れられると、ディフェンスラインが下がってしまうのです。それを耐えるには相手のボールサイドにプレッシャーをかける必要があるのですが、中盤もまた相手のプレッシャーに耐え切れずに下がってしまい、プレスをかけることもフィルターをかけることもできません。
ベタ引き状態の日本は、こぼれ球やクリアボールを拾えなくなってしまいます。宮間は中に入ってきてしまい、川澄は鮫島のフォローでディフェンスラインに吸収されてしまう。結局、中盤のサイドが無くなってしまい、ボールをキープして、距離と時間を稼ぐことも難しくなりました。大儀見は前線で奮闘していたのですが、一人ではやはりどうすることも出来ません。
どうでしょう…選手の並びを変えた方が良いんじゃないですかね。たとえば、大儀見の1トップにして、中盤の攻撃的なポジションに右から大野、宮間、川澄と配置(=4-5-1)した方がボールは回るんじゃないですかね。これだとINACコンビ(大野-川澄)の距離が離れてしまいますが、もはや2人の連係でどうこうって場面も見られなくなっているので、それは余り問題ないでしょう。まあ、実際問題として、決勝でいきなり並びを変えてくるってことは考えにくいですけどね。
とりあえず前半は凌ぎ切った日本。後半早々、追加点が生まれます。先制点と同じような位置で得たFKから、キッカーの宮間は再びライナー性のボールをゴール前に入れ、今度は阪口の頭にドンピシャで合わせます。直前のポジション争いで一瞬だけフリーになっていた阪口は、相手GKの頭上を抜く技ありのヘッドで追加点を奪いました。ここでも宮間のキックの質がモノを言いましたね。今大会、いまいち調子の良くない宮間。実際のところ、この試合でも結構パスミスをしていたのですが、FKではポジション的な孤立は関係ありませんし、相手のプレッシャーとも無縁です。宮間の高精度キックが決勝進出を引き寄せたと言えるでしょう。
まあしかし、この場面も、相手のイージーな連係ミスから棚ぼた的に得たFKであり、阪口のポジションも実際には微妙に(左手が)オフサイドラインに引っかかっていたので、やはり、なでしこにはツキがありました。
幸先良く後半のスタートを切ったなでしこですが、後が無くなって猛然と攻めかかってくるフランスを前にして、再びベタ引き状態に陥ってしまいます。ベタ引き状態で、何とかゴール前で跳ね返して耐える…こういう試合展開は、たとえば昨シーズンBPL最終節のQPR対マンチェスターCであったように、最終的には決められてしまうことが多い展開なので(まあ、あれは退場者もありましたが)、自ら好んでやるようなものではないですね。逆に、マンチェスターUなどの常勝軍団は、(得点が欲しい場合)ああいう状態に相手を押し込んで、最終的にゴールを奪ってしまうということが良くあります。
押し込まれ続けるなでしこもまた、この例外ではありませんでした。フランスはなでしこの左サイド(鮫島)が弱点と見て、集中的にこのサイドから攻め立ててきます。阪口のミスからボールを奪われ、さらに鮫島がやや軽いプレーで飛び込んでしまい、そこからサイドを抉られて上がったクロスに対して、途中投入された9番の選手が右足を振り抜いてゴール。なでしこは開幕戦以来の失点で一点差に詰め寄られます。
鮫島は守備に難がある選手ですし、一試合に一度くらいは危険なミスを犯すのですが、鮫島がいなくなるとチーム自体が機能しなくなるので、代える訳にはいかないんですよね…
一方のフランスは、途中投入されてゴールを奪った9番の選手の活きが良く、なでしこを敗戦の瀬戸際まで追い込みます。左サイドからペナルティエリアに侵入し、阪口のファールを誘ってPK奪取。一方的に押し込まれる展開のなか、なでしこの方にはもはやゴールの可能性がほとんどありませんでしたから、もしこのPKが入っていたならば、試合はフランスのものになっていた可能性が大きかったでしょう。ところが、なんとしたことか、このPKを(途中からキャプテンマークを巻いていた)15番の選手が外してしまいます。
このような状況でPKを蹴るというのは、誰にとっても大変なプレッシャーがかかるので、正直、この選手はやや気の毒だったかも知れません。むしろ、勢いに乗っていた9番の選手が蹴った方が良いような気もしました。ともあれ、このPK失敗でなでしこは救われました。またしてもなでしこは運に助けられたのです。
その後、フランスは長身のDFルナールを前線に上げ、パワープレーを仕掛けてきましたが、これはやや遅きに失していたかも知れません。もう少し時間があったら危なかったと思いますね。また、フランスの14番メシブは非常に技術に優れた選手で、二人くらいを相手にしても余裕でキープしていたのですが、やや独りよがりのプレーが多く、なでしこにとっては助かりましたね。彼女が味方を使う術を覚えていたならば、遥かに危険な相手になっていたでしょう。フランスはセットプレーの守備を苦手にしているような印象も受けました。横から上げられたボールにはめっぽう強いのですが、縦に入れられたボールに対しては弱さも見せていました。
なでしこの方は、とにかく集中力を切らさなかったことが、最終的に勝利を手繰り寄せる結果に繋がったという気がします。先述したように、正直、このような守備の仕方は褒められたものではないのですが、高い集中力を保ちながら、なんとか最後の最後で踏みとどまって決壊を免れました。実際のところ、失点直後の時間帯などは頭が真っ白になってしまったのか、もうシステムも何も関係ないような状態にまで陥ってしまったのですが、まさに首の皮一枚でなんとか命運を繋ぎとめたような感じでした。
決勝の相手はアメリカですか…決勝では何が起こるか分かりませんし、どんな試合になるか予想もできません。どんなことでも起こり得るのが決勝という舞台の怖さであり、面白さでもあります。さて、なでしこはどんな試合を見せてくれるのでしょうか。