ピストルズ(阿部和重) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


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『ピストルズ』
阿部和重

2010年

概要
 「若木山の裏手には、魔術師の一家が暮らしている――」。田舎町の書店主・石川は、とあるキッカケから町の外れに住む魔術師一家と噂される人々と接触する。その名は菖蒲家。謎に包まれた一族の秘密を探るべく、石川は菖蒲四姉妹の次女・あおばにインタビューを敢行するのだが……。そこで語られ始めたのは、一族の間で1000年以上も継承された秘術にまつわる、目眩めく壮大な歴史だった。史実の闇に葬り去られた神の町の盛衰とともに明かされていく一子相伝「アヤメメソッド」の正体と、一族の忌まわしき宿命。そして秘術の継承者である末娘・みずきが引き起こしてしまった取り返しのつかない過ちとは一体――?やがて物語は2005年の夏に起こった血の日曜日事件の隠された真相を暴きだしてゆく……!!(講談社HPより)

感想
 散りばめられた幻想。箱庭のような小世界。個人史(ミクロな歴史)が積み重なっていって家史が出来る。ここには、たしかに、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』のような側面がある。特徴的なのは、物語における語り手の存在を明確に意識していること。伝聞と推測に基づいて描かれる小説世界の歴史。そもそも、歴史というもの自体が個々の視点からしか描くことができない。語り手の存在を抜きにしては歴史は語れない。歴史の真実を解き明かすことの不可能性。歴史は後から作られるということ。真実なるものはいつだってあやふやなものだ。その辺り、この著者は良く理解している。

 ただ、新作でも感じたけれど、ややオカルト傾向があるのが少し気になる。それから、描写、とくに風景描写はそれほど優れているとは思えない。そして、引用。これは潔いとも考えられるけど、少々唐突感があるかな。どうしても、作者それ自体を意識してしまうので、作品の昇華を妨げているように感じる。あまり良い効果を生んでいるとは思えないな…引用という形で直接載せるってのは、たとえば吉村昭さんもやっていることだけれど、吉村さんの調査は質量ともに余人には真似できないようなもの。阿部さんの場合には、周辺を抑え切れていないし、調査がやや表層的なところがあるんだな…結果として、題材を消化し切れていないような印象が生じてしまう。その辺りに、この作品にやや深みが欠けている理由があるのかなと。

 そんなわけで、箱庭的な世界の背後に壮大で広大無辺な世界を感じさせるかと言えば、そこはそれほどでもない。実際の歴史に接続を試みる辺りで断絶が生じてしまっている。この人の課題はその辺かな…ただ、こういうアプローチはボクは評価するし、現代的な物の見方にもマッチしている。その達成は未だ未熟なところがあるけれど、進んでる方向は間違ってないんじゃないかと思う。新刊を楽しみに出来る作家さんを見つけたような気がするな。次は『シンセミア』(2003年)を読んでみよ(* ̄艸 ̄)