ちと前になりますが、チェルシーのビラス=ボアス監督が解任されました。
その若さと、ポルト監督時代の圧倒的な成績から、前評判が高かったのですが、
チェルシーでは苦しみ抜いて、就任から一年を経ずして解任となりました。
今季のチェルシーからは、はっきりとした方向性が感じられませんでしたが、
しかし、それを判断するためには、もう少し時間が必要だったかも知れません。
ボクは、いかなる監督も一年以内で判断が出来るとは思わないので、
このような短期間で解任することには、常に反対の立場です。
しかしながら、「ビラス=ボアス監督は未熟だな」と感じたのも事実です。
彼は、その経歴から、モウリーニョ監督と類比して語られますが、
ボクが見たところ、2人には大きな相違点がありました。
それは「表情」です。
ビラス=ボアス監督は、(失点など)何か良くないことが起こるたび、
とても、悲しそうな表情をしていました。政権末期は特にそれが顕著でした。
「あんな表情でベンチに座ってたらイカンよな~」と、
ボクはいつも思っていたのです。
たとえば、リードされた状況で、指揮官が悲しい表情をしていたら、
監督自身が、逆転を、自身のチームを、そして自分自身を、
信じていないように、選手たちの目には映ってしまうでしょう。
今季のチェルシーからは鬼気迫るものが感じられませんでした。
粘り強さがなかった。それは案外、この辺りが理由なのかも知れません。
基本的にビラス=ボアス監督は良い人なんだろうなと思うのです。
しかしながら、それは指揮官としては必ずしも+には働かなかったのです。
さて、一方のモウリーニョ監督です。
彼は、言うまでもなく、ボクがもっとも高く評価する監督です。
もちろん、戦術家/戦略家としても優れているのですが、
それは、これまでにも何度か触れているので、
今回は、モチベーターとしての側面から話すことにしましょう。
先日のCL、CSKAモスクワ戦、第2legで興味深い場面がありました。
後半、交代を命じたカカがベンチに下がって来たときに、
モウリーニョは、彼の肩に手をかけ、その耳元に向かって、
何かを熱心に語りかけていたのです。
(もちろん、こういう場面は他の監督さんでも見かけます。)
時計を少しだけ過去に戻しましょう。
じつのところ、この試合、カカはアシストこそしたものの、
あまり良いプレーを見せることが出来ていませんでした。
守備をサボりがちなエース、C・ロナウドや、
the10番、エジルと共にプレーするレアルにおいては、
カカは攻撃の全権を握る王者として振る舞うことは出来ません。
そのため、彼は自らが「使われる」動きを良く見せていました。
たしかに、良く走り回っていましたし、チームを助けました。
しかしながら、彼は、かの「カカ」なのです。
彼にはプライドがありますし、自身のプレーが
そんなものではないことは自分自身が一番、良く分かっている。
自らのプレーに納得がいかず、フラストレーションを溜めていたことは、
苛立つように相手選手を振り払った前半の場面からも明らかでした。
そんな中、交代を命じたモウリーニョ監督が声を掛けたのは、
こういうことだった筈です(以下、推測)
「キミの(自己犠牲の)おかげでチームが助かった。
ぼくらは、キミのおかげで次のステージに進めるんだ」
カカは「分かった分かった」というようにベンチに戻ったのですが、
プライドの高い彼が、この言葉に心を動かされなかった筈はありません。
モウリーニョの人心掌握術の一端が、ここからは見て取れます。
さらに、モウリーニョはそれだけにとどまりません。
試合後の記者会見でも、しっかりとカカをフォローしています。
「カカは素晴らしいプレーをしてくれた。彼は今まで以上にハードワークを続けている。献身的なプレーを続けていれば、残り15分で足がついていかなくなるのも当然だ。前半の決定的なチャンスはほとんど彼が作っていた」(スポーツナビ)
つまり、2つのチャンネルでカカに自分の考えを伝えたわけです。
たとえ、自己犠牲のために自らのプレーが納得いかないものになっても、
指揮官はそれを理解してくれ、そしてその犠牲を評価してくれる。
モウリーニョが選手から絶大な信頼を寄せられるのが分かる気がします。
この指揮官のためなら…って気持ちにボクだったらなりますね。
2012/3/16