一方通行のエスカレーター。12月の大気はどこか寂しげで、ボクを不安な気持ちにさせる。優しさと思いやり、誇りと自信。言葉に表せる筈の諸相。静かなビル峡谷に響き渡るtimbre。ひとつひとつのネオンが身体を貫いていく ― 星々の世界を突っ切るかのように ― よるべなく、夜の海に彷徨う。舞い落ちる銀河のしずく。足の裏、踏みしめる砂の感触。
無限の波長を織り込んでいくアリアドネの糸、薄く遮られた光。横目で見やる夕暮の街。ありとあらゆることが繰り返されるロンド。斜めに突き刺さる光速のarrow。影絵のように流れる人々。茫洋とした空と海。きっと、テンプレートじゃダメなんだ。掌を冬風が触れる。麻痺し始める感覚。
そっと、目を閉じてみる。そこに何があるのかも分からずに ― そっと、目を開いてみる。なにもかもを曖昧にすることが世界を汚していった。どこまでも透き通った生き方に焦がれる。遥か高空を滑っていく明滅。昏倒のパトロクロス。数億度の劫火で結晶化する魂。行方知れずの旅人たち。
どこへ行くあてもないのに、それでも歩いている。どこへ行こうと何も変わらないのに、それでも星を見ている。砂漠の傍ら、千年に一度だけ咲く花だってあるというのに、こんなにも柔らかな光の傍で、それでも心は呼吸を止める。過去はいつだって背景に融けていく。遥けきアストロ。星たちの奏。深々と降る雪、優しさのセレナーデ。
あの頃から一歩も進んでいない。そんな気がする。
