『眠れない夜』
憂いは晴れない。眠れない夜。
真っ暗な廊下に立ち、ふと思う。
「あの頃とちっとも変ってないな・・・」
守るべきものがあったあの頃。
やるべきことがあるはずの今。
憂いの感覚は何も変わらない。
きっと、ボクがボクである限り、
この憂いは消えないんだろう。
こういう時に決まって、
思い出す逸話がある。
昔、中国の高潔な士大夫が放逐された。
河岸を歩いていて、ある老漁父に出会う。
漁父は問う。
「何故、こんなところにいるのですか?」
士大夫は答える。
『みなが酔っているのに、私だけが醒めている。』
だから放逐されたのだと。
達観した老漁父は、こう薦める。
「みなが酔っているのなら、あなたも酔えば良い。」
士大夫は再び答える。
『そうするくらいなら、身を投げた方がましだ。』
老漁父は、にっこりと笑って去った。
もちろん、ボクは高潔な士大夫じゃない。
けれど、その心境は痛いほど良く分かる。