大欅の向こうに消えた夢 | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


かれこれ10年以上昔のことになる。

当時、ぼくは競馬が好きだった。


まだ未成年だったから

お金なんて賭けたことはなかったけれど、

ただ観ているだけでも充分に楽しかった。


緑色に輝く一面のターフ。

躍動する馬たちのしなやかな四肢。

競馬というのは美しいスポーツだ。

ドガやデュフィは競馬をモティーフにして絵を描いた。

その気持ちは良く分かる気がする。


夏には北海道で牧場めぐり。

雨に霞む放牧地、今でも忘れられないのは、

屋根の下で静かに佇んでいたトウカイテイオーの姿。

「馬にも気品があるんだな」

そう思ったあの夏。


当時、家族でPOGをやっていた。

POG(ペーパー・オーナー・ゲーム)は、

仲間内でそれぞれの持ち馬を決めて、

その合計ポイント(獲得賞金など)を競うゲーム。

大体、1人が10頭くらいを所有するのが一般的。


その馬「サイレンススズカ」は僕の馬だった。



↑は彼が生涯で最高の走りを見せたレースです。


美しい馬だった。


あの柔らかい体。

出走ゲートを潜り抜けて脱走した。

たぶん、前代未聞だったんじゃないかな・・・

聞かん気で、ヤンチャで・・・天性の逃げ馬だった。


異次元の走り。

圧倒的なスピードで他を寄せ付けず、

そのまま直線に入って逃げ切ってしまう。

「他の馬なんてボクには関係ない」

そういう風に走った。


彼と一緒なら、

このままずっと地上を離れて、

何処までも飛んで行けるような、

そんな気がしていた。


あの秋の日。

あの大欅の向こうで、

すべてを置き去りにして・・・

彼はホントに天国へ行ってしまった。


叶えられなかった夢を抱えたまま

ひとり取り残された僕は、

それ以来、競馬を観なくなった。

そういう話。


今でも、弟は競馬を観ている。

そんな弟に僕がひとつだけ頼んでいることがある。

「あれくらい圧倒的な逃げ馬が出てきたら教えて」

あれから10数年。

未だに、その願いは叶えられていない。