
Nur die Maedchen fragen nicht, welche Bruecke zu Bildern fuehre.
-Rainer Maria Rilke
『美に関する考察の試み』
道はいつでも二手に分かれている。全ては遠く遠くへと運ばれて行った。いま、不確定性の現在の中で、僕はこの文章を書いている。真綿越しの太陽は、心を浄化せずに融かしていく。西に開いた窓から光が差し込み、日陰の仄かな階調は掻き消された。揺れる電車の中、僕は美について考える。物憂げな瞳。張り詰めた背筋。君は戦士のように事象の地平を切り啓いていく。君はいつでも光の中に居た。ホームに佇む姿。足早に去っていく後ろ姿。光を仰いで反射する、君は月の精。無窮のハロウ。地上に降りたArtemis。二つにそろえた足。星を掴む手。心に焼き付くフレームは刻々とその枚数を増やしていき、圧迫されたキャパシティは僕の心を重くする。過去は光よりも遠く、詩を失った僕にはどうにも届きそうがない。追憶の傍に立った君の美は、刃のように僕を切り刻んでいく。闇を歩いてはいけない。きっと君の美は闇を切り裂いてしまうから。水脈の畔を歩きながら、僕は美について考える。静かな街を吹き抜ける風と、古びた校舎に降り注ぐ光。そんなものの中で、きみは事象の地平を切り啓く美そのものなのだ。
ひたすらに過ぎゆく日常の中で、僕はいくつかの言葉を失った。詩を失った僕には、死という美すら許されない。たとえば全てを解き明かした老賢者。死だけが残されたexplore。蒸気で動く潜水艦。タキオン粒子を蓄えて、6つの世界を飛び越える。辿り着いた場所は、見渡す限りのエメラルドグリーン。白い白いユリの花、仄かに光る霧の粒。天上のパッサカリア。星空のアクアマリン。駆け上がる流星たち。詩と死とを結んだ深い深い霧は、やがて乳白色の海へと変わった。この終わりなき世界。僕は死を経験することはない。死は僕の外にあるものだから。時々、呆然とするほど全てが遠く感じることがある。何もかもが背景に消えていって、僕はただ一人前景に佇んでいる。
ロゴスの無機質な絨毯爆撃の下で、多くの詩人たちが斃れていった。脱構築される構築。自らの手で自らを括る音。こんなに高い場所では、投げた石の音も聞こえない。水平化されていく地平線。増大するエントロピーは、終末の序曲を奏でながら、終わりと始まりを=で結ぶ。全ての崩壊する因果性は、星たちの世界のおとぎ話。嫋やかな水門に明滅する灯火と、薄絹のような霧雨。そんなものの中で、きみは事象の地平を切り啓いていく。
朽ちた柵の上空を突き進むH2A。砕け散ったオービター。不戦条約のラグランジュポイント。全ては画面の向こうにあり、幻想に散りばめられている。アイステーシスは僕の傍らで、浅い夢に抱かれていた。そして、いつしか世界から真理が消える。繰り返されるロンド、当たり前の日常。恒星の間近で失われていく箒星。行方知れずの天体に、いつ届くとも知れぬ手紙。2日のように明日を生き、3日のように今日を生きる。全ての崩れ去る因果性は、星たちの神話を蘇らせるだろう。積み重ねられたテトラポッド。覆いかぶさる無色の波。瞬間が切り刻まれていく中で、僕はここにいて、どこにもないはずの美を、ただ眩しそうに眺めている。
時間の坩堝に呑み込まれて削ぎ落とされていった想像性は、瞬間の針に刺されて鼓動を止める。バンシーに魅入られた瞳は、星屑のような都会の闇で、数知れぬ屠殺を見出す筈だ。時計の針は動きを止めず、君は世界の先端で、事象の地平を切り啓いていく。全ては君の傍にあり、瞬きながらまどろんでいる。かき集められた心の想像性は、この世界を包むに足りるだろうか。行方知れずの彷徨者たちは、聖なる朝に為す所を知らず、石のように在ることを選ぶ。君は、そんな日常の中で、全ての蒙昧を切り裂く美そのものなのだ。
時間の坩堝に呑み込まれて削ぎ落とされていった想像性は、瞬間の針に刺されて鼓動を止める。バンシーに魅入られた瞳は、星屑のような都会の闇で、数知れぬ屠殺を見出す筈だ。時計の針は動きを止めず、君は世界の先端で、事象の地平を切り啓いていく。全ては君の傍にあり、瞬きながらまどろんでいる。かき集められた心の想像性は、この世界を包むに足りるだろうか。行方知れずの彷徨者たちは、聖なる朝に為す所を知らず、石のように在ることを選ぶ。君は、そんな日常の中で、全ての蒙昧を切り裂く美そのものなのだ。