2000年(mawari) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
竹仲絵里『傘』
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『あの頃』


かつて、彼女は「mawari」という名義で活動していた。

《みんないるよ》という曲に一目(耳?)ぼれしたボクは、

横浜HMVで行われた彼女のインストア・ライブに駆けつけた。

それ以降、彼女のイベントが行われるたびに出掛けていった。

彼女の歌に、どれほど勇気づけられたか分からない。

ランドマークタワーも日比谷公園も吉祥寺も彼女のイベントで初めて行った。

僕にとって、彼女はあの頃の象徴みたいで、

声を聞くだけで、心はあの頃へ飛んで行く。

あの頃が一番切なかった。いつも1人で街を歩いていた。

家に帰れば、いつだってあの子が待っていた。



渋谷Egg-manでの彼女の初(有料)ワンマンライブ。

坂の途中で信号待ちをしていると、

スーツを着た金髪のお兄ちゃんが話しかけてきた。

「何処に行くの?」

『ライブ』

「バンドか何か?」

『mawariっていう女性ボーカル』

「カワイイ?」

『うん』
 
「どこから来たの?」

『茅ヶ崎』

「茅ヶ崎って遠くない?」

『それほどでもない』

「絵とか好き?」

『好きだけど・・・』

「このビルの上にギャラリーがあるんだけど、好きな絵ハガキあげるし、

 俺、あと1人でアガれるから来てよ。」

・・・ここまでアケスケだと逆に気持ち良かった。

ライブまで一時間ほどあったし、一度釣られてみるのも

勉強になるかなと思って、人助けの積もりで着いていくことにした。

少し古ぼけたビルに入ってエレベーターで昇っていく。

「助かったよ。ありがとう」とか何とか。

あの頃、怖いものなんて何もなかった気がする。


ギャラリーに入ると若い女性にスイッチした。

「ライブに行かなきゃいけないのに、俺のために来てくれたんだよ」

そう言い残して、金髪のお兄ちゃんは奥へと引っ込んでいった。

スイッチした女性は妙になれなれしい態度をとる。

「ライブに行くんですか?カッコイイ!私も行きたいな~・・・」

見え透いたお世辞がどうしようもなくイヤだった。

そんなことでボクを褒めるなよ・・・

どんな時だってプライドだけはエベレストより高かった。

「学生さん?」

『イヤ』

「お仕事は何されてるんですか?」

(コンビニでバイトしてるとかなんとかテキトーに答えた気がする。)

用紙に住所と電話番号を書かされたけど、

もちろんテキトーにそれらしいものを書いて置いた。

ボクはライブが始まってしまうからと言って、その場所を出た。

絵ハガキは貰わなかった(というより忘れられていた。)


ライブ会場は超満員だった。

日比谷公園で引き換え券を貰っていた僕は椅子席に座れた。

素晴らしいライブだった。一つ一つの音を大切に聴いた。

初の単独ライブに彼女がどれほど心を込めているかが伝わってきた。

音楽というものが本当に素晴らしいものだと感じた。


「絶対に破ったりしないで下さいね。(名刺が)カワイそうだから」

と言われてギャラリーで渡された名刺は、駅のごみ箱に捨てて帰った。

『ライブはこれでおしまい』何故だかそう心に決めたのを覚えている。

少し寒い秋の日だった。


あの頃は、mawariやスーパーカー、岡北有由などが

これからの世界を作っていくんだと思っていた。

西暦2000年。僕らの時代だった。

近頃、無性にあの頃のことを思い出す。